出版社内容情報
妻に逃げられ、生活保護を受けながらも身勝手なダンディズムを貫いて生きる。下流老人社会を予見する、21世紀の老人文学。離婚を繰り返し、生活に困窮して生活保護と年金で生きる老人の日常の壮絶。高齢化社会を迎えた今、貧困のなかで私小説作家は、いかに生きるべきか……。下流老人の世界を赤裸々に描きつつも、不思議に悲愴感はない。自分勝手なダンディズムを貫き哀感とユーモアを滲ませる、二十一世紀の老人文学。
ムスカリ
ぼくの日常
明日なき身
火
灯
解説 富岡幸一郎
略年譜・著書一覧
岡田 睦[オカダ ボク]
著・文・その他
内容説明
離婚を繰り返し、生活に困窮した作家、生活保護と年金で生きる老人の日常の壮絶。高齢化社会を迎えた今、貧困のなかで私小説作家は、いかに生きるべきか…。下流老人の世界を赤裸々に描きつつも、不思議に、悲愴感は感じられず自分勝手を貫く、二十一世紀の老人文学。
著者等紹介
岡田睦[オカダボク]
1932・1・18~。小説家。東京生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒。同人誌「作品・批評」の創刊に慶應の友人たちと携わる。1960年「夏休みの配当」で芥川賞候補。『群像』2010年3月号に「灯」を発表後、消息不明(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんやん
29
ダメダメ私小説家。最後の単行本が人生初の文庫化。3番目の奥さんに逃げられ、自殺未遂。生活保護。夫婦名義の家を強制的に追い出され、アパートで一人暮らし。食べるものがなく、暖をとるため室内で火を熾し火事に。で、貧困ビジネスの集合住宅の一室で、金にならない小説を書き綴る。本当に明日なき身の下流老人。どこまで本当の話なのか当惑する。出版時70代半ば。自虐やユーモアがあれば、まだ救われたのに。最後の短編のあと、消息不明。最悪の結末を迎えてしまった。こうなる前に、働けよと言いたかった……。2024/11/23
きっち
12
岡田睦(おかだぼく)、1932年東京生まれ。慶応義塾大学文学部仏文科卒。1960年に「夏休みの配当」で芥川賞候補。3度目の妻と離婚後、生活に困窮し、生活保護を受けながら居所を転々とし、『群像』2010年3月号に「灯」を発表後、消息不明。全5編収録。冬、暖房器具のない部屋で暖をとろうと洟をかんだティッシュで焚火をして(!)ボヤ騒ぎを起こし、ついにはアパートを追い出されるまでを描いた「火」が凄いが、担ぎ込まれた施設での日常を淡々と描いた「灯」も鬼気迫る傑作。いわゆる下流老人の呟きなのだが不思議と悲壮感はない。2019/03/31
ソングライン
8
60代で妻と離婚した小説家の主人公は、うつ病を患い、生活保護を受けつつ、施設を転々とします。話をするのは意地の悪いケースワーカーと昔の友人。家族を失い、未来の幸せを想像することができず、やがて訪れるのは死。そんな状況で、わが身の日常を小説として書き続けるのは、生への執念のためなのでしょうか。2017/10/27
名無しの権兵衛
5
壮絶な私小説だった。 一つの本を読んでここまで心を動かされたのは初めてかもしれない。 坂口安吾の"教祖の文学"に以下のような一文がある。 「作家はともかく生きる人間の退ッ引きならぬギリギリの相を見つめ自分の仮面を一枚づつはぎとつて行く苦痛に身をひそめてそこから人間の詩を歌ひだすのでなければダメだ。」 であるならば、まさにこの小説は"人間の詩"そのものだ。 自分の仮面を剝ぎ、血塗れになりながら、それでも作者は苦しみの声を上げない。 まるで「これこそが作家というものだ」と言わんばかりに。2024/07/29
マーク
5
30 私小説の極致。消息不明の小説家。生活保護で暮らす私小説。老人文学。「ムスカリ」「明日なき身」「灯」最後の作品が尋常な意味でまとも。ラストワードか再見、とは意味深。 明日なき身。途中から意味不明。自殺未遂、精神病、薬物依存。マーフィー。コンビニパートに難癖つける爺さん、やめとけよ。コンビニ出入り停止。こんなの出版できる?電気電話止められても煙草吸う。 2021/11/22