出版社内容情報
富岡 多惠子[トミオカ タエコ]
著・文・その他
内容説明
なぜ詩人犀星が小説を書くようになっていったのか。なぜ小説家となった後も生涯にわたり詩を書き続けたか。同じく詩人として出発し、小説へと舞台を移した後、詩を書かなくなった“犀星ファン”の著者は、犀星の詩を丹念に読みながら、稀有な詩人・小説家の生涯と内奥、そして「詩」と「小説」の深淵に迫っていく。類い稀な個性と個性の邂逅が生んだ、傑作評伝。
目次
1 詩人の誕生
2 『愛の詩集』と『抒情小曲集』
3 詩から小説へ
4 詩の微熱
5 戦時下の詩
6 詩の晩年
著者等紹介
富岡多惠子[トミオカタエコ]
1935・7・28~。小説家、詩人。大阪市生まれ。大阪女子大英文科在学中に小野十三郎に師事、1958年『返禮』でH氏賞、61年『物語の明くる日』で室生犀星詩人賞。70年代から小説に転じ、74年『植物祭』で田村俊子賞、『冥途の家族』で女流文学賞、77年「立切れ」で川端康成文学賞、97年『ひべるにあ島紀行』で野間文芸賞を受賞。近年は評論に新境地を拓き、2005、06年『西鶴の感情』で伊藤整文学賞、大佛次郎賞の両賞を受賞する等、高い評価を得ている08年より日本芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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A.T
21
室生犀星は明治35年13歳で高等小学校を退学後、句作を始め、その後一匹狼的に詩作、さらに小説家へと創作を広げた。いわば文学界の浪人のような人だったから女性に対し社会一般で下に見られる者への賛美が高い。そんな古い時代感覚に根差したことを差し引いても、今も読む価値があるという。創作の転機となっている作品を指摘し、その動機が何であるか。詩を書き、小説を書くパラレルな創作によって、作品の内容がどのように変化したか… 犀星と同じ詩人で小説家の富岡多恵子ならではの鋭い読み込は、現代の作品作りや鑑賞にも役立ちそう。2023/04/12
mstr_kk
3
富岡多恵子による室生犀星の評伝。面白いけれど、よくわからないところも多々あります。けっこう難しいことをいっているんじゃないでしょうか?2024/10/11
Sylvie
0
犀星同様、詩に出発し小説へ向かった(戻ることはなかったが)富岡自身の関心と熱意によって、主に犀星の詩と小説への意志・行為が丁寧に分析されている。犀星の詩の青年期に魅せられた個人として、詩における「決別」や小説との対幻想、共存幻想の概念から学べたことは多い。『抒情小曲集』や『愛の詩集』における人道主義は、犀星元来の野生や庶民性の上に積み上げられた「知識の興奮」でしかない(152)。ウタウ(詩)自己陶酔と、カタル(小説)自己解体という対比によって、「復讐の文学」の姿もより鮮明に見えてきた。2022/10/02
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