出版社内容情報
1975年以降に発表された名作を5年単位で厳選する全8巻シリーズ第5弾。現代小説は40年間、如何なる創作の道を歩んできたのか1975年以降に発表された名作を5年単位で厳選する全8巻シリーズ第5弾。現代小説は40年間、如何なる創作の道を歩んできたのか
川上 弘美[カワカミ ヒロミ]
著・文・その他
角田 光代[カクタ ミツヨ]
著・文・その他
古井 由吉[フルイ ヨシキチ]
著・文・その他
黒井 千次[クロイ センジ]
著・文・その他
阿部 和重[アベ カズシゲ]
著・文・その他
柳 美里[ユウ ミリ]
著・文・その他
竹西 寛子[タケニシ ヒロコ]
著・文・その他
目取真 俊[メドルマ シュン]
著・文・その他
日本文藝家協会[ニホンブンゲイカキョウカイ]
編集
内容説明
留守番電話のテープに聞き入る三人の男「声の巣」。決められた役割を忠実に演じる私たち「学校ごっこ」。女の姿をした蛇が私の部屋に住みついて「蛇を踏む」(芥川賞)。家族の頚木から解き放たれたはずなのに「家族シネマ」(芥川賞)。あのとき彼はなぜ人を拝んだのか?「不軽」。足先から滴る水と寝室に現れる兵隊たち「水滴」(芥川賞)。静かに老いゆく妻、友と見た景色「椿堂」。僕が深夜の公園で遭遇した、ある出来事「無情の世界」。現代文学四〇年の試みを眺望するシリーズ第五巻。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ピンガペンギン
28
黒井千次(1932-)「声の巣」(1995)黒井氏は当初は富士重工の会社員生活との二足のわらじを履いていた。会社員同志の会話が、サラリーマンは身につまされるのでは。「つまり、誰も彼のことは心配していないわけだ。」古井由吉「不軽」先日エッセイ集を読んだところ。これは良かった。他の作品も読んでみたい。目取真俊「水滴」沖縄の活動家でもある作者のイメージが勝手に脳内でできていて、このような作品だとは予想外だった。徳正の右足が西瓜のようにふくれあがり水が滴る。沖縄、本土両方の戦士した兵士たちがその水を求めて現れる。2025/07/14
読書亀
8
8短編。角田光代さん以外、初読み作家さんでした。『学校ごっこ』ごっこがごっこではなくなる怖さ。『椿堂』短いが逆に色々想像させる「あの事」。『無情の世界』本当の事はどこなのか?悪い方へはまり込む。2019/10/22
giant_nobita
5
目取真俊の「水滴」が特に良かった。沖縄戦の歴史と足が冬瓜のように膨れ上がるという民話的なモチーフを融合させた作品。非現実的なほら話を歴史的な文脈に位置づけ、冷静な観察に基づいた客観的な散文によって綴るところにマジック・リアリズムの影響を感じさせる。また徳正が足の指を兵隊に吸われる場面では、生々しく官能的な描写も使われている。水滴として具象化される抑圧された罪の記憶は癒しの水とも「腐れ水」ともなる。ただそれは物語の結末において命の隠喩とも言える黄色い花を咲かせることで、かすかな希望を感じさせる。2016/10/10
ハイザワ
2
『水滴』。戦争の記憶を足の腫瘍を通じて静かに思い出す男と、腫瘍から飛び出た水を使って金儲けに走る男との対比的な構成が話に推進力をもたらしていた。『学校ごっこ』は、どこまでが演技でどこまでが事実なのかという二分法すら曖昧になってしまうような、ネタ・ベタが交錯する瞬間が描かれていた。時代の空気をもろに反映させた小説という感じがした。2016/12/05
カンナバーレ
0
柳美里 目当てで読み始めたが、それ以上に面白い作品がたくさんあった。2016/03/17