出版社内容情報
川崎 長太郎[カワサキ チョウタロウ]
著・文・その他
内容説明
川崎長太郎には、小田原の花街・宮小路を舞台とした“小津もの”と称される一連の作品がある。スター的映画監督・小津安二郎と三文文士・長太郎が、ひとりの芸者を巡り対峙する。長太郎に勝ち目はない。ひたすら“純情”を武器に、小津の独身貴族的不誠実を衝く。小津自身に読まれることを見越した如く書かれた挑戦的な戦前・戦中作九篇に、ヒロインのその後を辿る戦後作を加え全十篇を収録。半数は単行本未収録。
著者等紹介
川崎長太郎[カワサキチョウタロウ]
1901・11・26~1985・11・6。小説家。神奈川県生まれ。小田原中学を中退して、家業の魚商につく傍ら、同郷の民衆詩人福田正夫に師事。左翼的作品を発表。1920年頃より上京、帰郷を繰り返す。23年、萩原恭次郎、岡本潤らと「赤と黒」創刊。震災後アナーキズム運動から離れ、25年、徳田秋声の推挽で「無題」を発表、文壇デビュー作となる。私小説家をめざすが、不遇な時代が続く。38年、永住の覚悟で帰郷、実家の物置小屋に棲み、創作に専念。54年、娼婦たちとの関わりを描いた『抹香町』で長太郎ブームが起きる。62年、結婚。私小説一筋の生涯を貫いた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かんたろー
10
川崎と言えば浜辺の漁器具小屋暮らしが定番と思えば抹香町以外にも花街に通っていた。精神的交流に終わったあたりはこの人らしいと言えますか。2016/10/07
塩崎ツトム
3
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・小田原。現代でも高く評価される大監督・小津安二郎と、老実業家、それから貧乏作家の川崎長太郎ご本人が一人の芸者をめぐって一種の緊張関係に陥る。名声と財と出版という武器こそ違うが、本文のどこを呼んでも、落ち目でド貧乏な三流作家である長太郎こそが、この静かな愛憎劇のお邪魔な闖入者という風に見えなくもない。というか名前を伏せているとはいえ、芸者と自分の中を小説にして小津の目に届けようと画策しているって馬鹿じゃろか。というか「自分はこんなにプラトニックに愛してるんだぞ」としつこい。2021/04/09
yoyogi kazuo
2
若かりし日の作家が入れ上げた芸者との関わり。小津安二郎も登場するが三角関係というような単純な物ではない。個人的には戦後の抹香町ものや人妻ものの方が好き。2021/05/05
Asakura Arata
2
一人の人を巡って、これだけの小説が書けるのはすごいが、その人にとっては、えらい迷惑だろうなあ。いまだったら訴訟もんだな。この固執性はなんなのだろうかと職業柄考えてしまう。2015/02/20
ヤマダ キヨシ
0
☆☆☆2015/01/13
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