出版社内容情報
幼くして母を亡くし、継母と文筆家の父に育てられた才気煥発な娘あそぎ。
そのまっすぐな気性は時に愛され、時に人を傷つける。
婚家の没落、夫婦の不和、夫の病――
著者・幸田文自身を彷彿とさせる女性の波乱の半生を、彼女を取り巻く人々とのつながりの中でこまやかに描きあげた長編小説。
幸田 文[コウダ アヤ]
著・文・その他
内容説明
幼くして母を亡くし、継母と文筆家の父に育てられた才気煥発な娘あそぎ。そのまっすぐな気性は時に愛され、時に人を傷つける。夫婦の軋み、婚家の没落、夫の病―著者・幸田文自身を彷彿とさせる女性の波乱の半生を、彼女を取り巻く人々とのつながりの中でこまやかに描きあげた長編小説。
著者等紹介
幸田文[コウダアヤ]
1904・9・1~1990・10・31。小説家・随筆家。東京向島生まれ。文豪幸田露伴の次女。女子学院卒。1928年結婚。10年間の結婚生活の後、娘玉を連れて離婚。幸田家に戻り、父の傍らにあって家を守り、父の最期を看取る。47年父との思い出の記「雑記」「終焉」「葬送の記」を執筆。その清新な文体が好評を博し、随筆家として出発。56年『黒い裾』で読売文学賞、57年『流れる』で芸術院賞等を受賞し、小説家としても文壇的地位を得た(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遠い日
5
幸田文本人に最も近い造形だとされる主人公、あそぎ。そして、あそぎと従兄弟・順治の物語でもある。まっすぐな性格のあそぎが人生を、悩みつつ憂いつつも果敢に生きていくさまが、克明に描かれる。初恋、娘時代の恋、結婚、夫の失業、夫の病。恋は描かれても、それはあそぎという女性を作りあげる一要素として、さっぱりと分析される。従兄弟の順治という存在が影に日向にあそぎの折々の困難に、脳裏をよぎる。お互いの人生をぼんやりとでも照らす存在が、この従兄弟同士の関係だ。『北愁』というタイトルが最後に悲しいほどの意味を持つ。2014/04/09
amanon
2
蓮っ葉で気が強くて、可愛げに欠けるけど、どこか憎めない…著者自身をかなり反映させたと思われる主人公あそぎにはなぜか読者をひきつけるものがある。何かにつけ辛辣な批評を加える従兄弟の順次との関係も、最終的に恋愛関係に至らないまでも、微妙な思慕が伺えて温かみを感じる。また、特に後半話暗い顛末を迎えるストーリーも、あそぎのバイタリティーのためか、それ程陰惨さを覚えない。恐らく転んでもただでは起きないというその後の展開を予想させるというか…個人的にはタイトルが暗示するように、実際北で活躍する姿を見たかった気がする。2018/02/19
k.kishida
1
ずーっと、ご無沙汰だったので久しぶりに日本の純文学を読む。作者を思わせる一人の女性あそぎの人生の一部を淡々と描いています。後半になるとその生活にいろいろな災いがやってきて、彼女に試練を与えるけど、なんとか大丈夫。小さい頃から親しいいとことの微妙な関係もいいですね、最後はちょっとしんみりしてしまうけど。読んでよかった。 次も純文学でいきます。2014/11/07
ahchan_plus
0
1人の女性とその従兄という、恋愛でもなく家族でもない2人の関係性を描いているのがおもしろい。あそぎも従兄の順治も、それぞれ持て余している自分の性格、どうしようもなく足りない要素を受け入れたり宥めたりしながら生きていると思った。2014/04/24
バニラ
0
★★2014/01/23