出版社内容情報
丸谷才一の古典評論
島国で育まれた特異な文学 その秘密を解く
有り余る才能を惜しまれつつ2012年10月に亡くなった丸谷才一。
古典にも造詣が深い著者の『忠臣藏とは何か』『日本文学史早わかり』に次ぐ作品。
※本書は、『恋と女の日本文学』(講談社文庫・2000年5月刊)を底本としたものを改題しました。
丸谷 才一[マルヤ サイイチ]
著・文・その他
内容説明
『忠臣藏とは何か』『日本文学史早わかり』と並ぶ、丸谷才一の古典評論三部作。中国文学から振り返って、『源氏物語』『新古今和歌集』という日本の文学作品を検証した孤立無援の本居宣長の思考を蘇らせ、さらにはその視点で近代日本文学をも明確に論じる。女系家族的な考えから日本文学を俯瞰した「女の救はれ」を併録した『恋と女の日本文学』を発表時の題に戻し刊行。
目次
恋と日本文学と本居宣長
女の救はれ
著者等紹介
丸谷才一[マルヤサイイチ]
1925・8・27~2012・10・13。小説家、評論家、翻訳家。山形県生まれ。東京大学文学部英文科卒業。1945年入営。68年「年の残り」で芥川賞受賞。その後、「たった一人の反乱」(谷崎賞)、「樹影譚」(川端賞)、「輝く日の宮」(泉鏡花賞)などの小説や、評論を数多く発表。また多岐にわたる随筆も意欲的に執筆。2011年には文化勲章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
30
偏狭な国粋主義者と思っていた本居宣長だが、彼が恋愛軽視の漢文学との孤独な戦いの末に恋愛重視の国文学の特質を見出さなければ明治における西欧文学の受容はもっと困難だっただろうとの説には説得力がある。源氏物語の最後に出てくる横川の僧都を浄土教の源信と重ねて浮舟の後ろ姿に女人の救われを見出し、平家物語の最後の建礼門院にも同様のものを見る。同時代の法然の、貴賤や性別に関わらず誰もが救われる新しい福音がいかに革命的だったか。古代の母権制まで話が及ぶのは大風呂敷と思うが、女性を大切に思う伝統は確かにあったのかも2021/11/25
あきあかね
27
小説家であり、批評家でもある丸谷才一の文学論は、伸びやかな想像力と軽やかな語り口を伴っていて、実証を重視する学術書にはない魅力がある。 新古今和歌集などの勅撰集における恋の歌の多さや最古の長編恋愛小説である源氏物語など、恋を描くことを好む日本文学の特質とその要因を、呪術性、儒学の拘束力の弱さ、公より私に重きを置く傾向といったキーワードに基づき、中国文学との比較から明らかにする。さらに、日本文学と同様に恋愛に肯定的な西洋文学は、男女の関係だけでなく、同時に「社会」を描いたものが多いと指摘する。⇒2021/04/10
fseigojp
11
女人往生についての名講義2015/07/30
もち
8
おもしろく読んだ。豊富な読書量によって、話がふくらんでいき、繋がっていく感じが小説家としての技量を思わせた。建礼門院の位置づけがとてもおもしろかった。おすすめ。2017/11/29
ja^2
6
「源氏物語」の読破に挑戦したものの、一巻目を読み終えたところで既に青息吐息。少しでも読み進める助けになればと、この本を手にとった。▼おもしろい。我が国の文学の中心テーマは色恋であったと言うのである。文学が人間の内面を表現するものである以上、当たり前ではないかと言うなかれ。長らく日本にとっての先進国であった中国ではなかったことだからだ。▼そこに明治になって同じテーマの西洋文学を受け入れる素地があったと言う。さらに女人往生、母系社会への憧憬を絡める論理展開は大変読み応えがあった。さあ、二巻目に行くとするか。2018/01/05