出版社内容情報
作家・遠藤周作の名作短篇を集めた短篇集。
『沈黙』から『深い河』にいたる代表的純文学長篇小説の源泉ともいえる短篇の数々。
※本書は、『遠藤周作文学全集 第6?8巻』(1999年10?12月 新潮社刊)を底本としました。
また『天国のいねむり男』は全集・文庫など未収録作品です。
シラノ・ド・ベルジュラック
パロディ
イヤな奴
あまりに碧い空
その前日
四十歳の男
影法師
母なるもの
巡礼
犀鳥
夫婦の一日
授賞式の夜
天国のいねむり男
遠藤 周作[エンドウ シュウサク]
著・文・その他
内容説明
遠藤周作には、代表的長篇小説が多くあるが、それぞれの長篇には、源泉となる短篇作品がある。遠藤文学の核となる名短篇十二篇と単行本未収録の一篇。遠藤周作の文学・人生・宗教観がすべてわかる短篇集。
著者等紹介
遠藤周作[エンドウシュウサク]
1923・3・27~1996・9・29。小説家。東京生まれ。幼年期、満州で育つが、両親の離婚で、神戸に戻る。カトリック信者であった伯母の影響で受洗。慶応大学文学部仏文科卒業後、1950年よりフランス留学。53年2月帰国。この留学時代が作家としての原点となる。55年、「白い人」で芥川賞受賞。主な著書に『海と毒薬』(新潮社文学賞、毎日出版文化賞)、『沈黙』(谷崎潤一郎賞)、『キリストの誕生』(読売文学賞)、『侍』(野間文芸賞)、『深い河』(毎日芸術賞)等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青乃108号
106
俺は文庫の最後に載ってる解説などは読んだ事がなく今回も読まず。遠藤周作は「海と毒薬」たった1冊読んだきりで決して詳しい訳ではないのだけども、確か子供の時分に兄が遠藤の「怪奇小説集」という本を1冊持っていて、こっそり盗み読みしてみたらこれが凄く面白かった記憶があり、これもいけるかも知れん、と思い読んでみたのだ。13編も収録された短編集は遠藤の私小説風味であり、結核で三年入院した話とキリスト教関連の話が複数の短篇で何度も繰り返される事に辟易した。けれども「夫婦の1日」には大変感銘を受けた。これだけで価値あり。2023/08/24
Gotoran
41
遠藤周作の文学・人生・宗教観がすべてわかると云う13編の短編を収録。僅かな不安感から自分の良心を裏切る弱い男、拷問の恐怖に耐えられず転向する切支丹、大病から奇跡的に生還した男と身代わりに息を引き取る九官鳥、捨てられてやせこけた犬の悲しい目,きたなく汚れた稚拙な聖母の絵…。情けなく、うらぶれた弱々しい、しかしどこか懐かしく,親しみがあり,ユーモアさえ感じられる。遠藤周作の代表的長編作品の源泉とも云えるという数々の短編を堪能した。2023/06/29
mayumi225
24
遠藤周作の心象風景を垣間見ることのできる本。読むのに少し時間がかかったが,その価値があった。遠藤周作の作品では私は「深い河」を偏愛していて,他はそこまで入り込めなかったのだが,この本を読んで,彼が生涯,執拗に書き続けたことが前より分かった気がした。長編が油絵だとしたら,この本はそのための習作スケッチを集めたもので,だからこそ骨格の線がよく見える。繰り返される母・キリスト・自分・動物といった主題の物語も良いが,夫婦を描いた「パロディ」「夫婦の一日」,冒頭の「シラノ・ド・ベルジュラック」もとても印象に残った。2017/09/22
kumako
18
入院中の自分を癒すために買った犀鳥が自分の難しい手術中(成功した)に死ぬ。息子を犠牲にしてまでイエスに生涯を捧げた母が、夫とは別れて最期の時に息子は繁華街で遊んでいて一人で逝く。善(イエス?)に縛られ続けて、それが偽善であることに苦しむ利光。「夫婦の一日」の中に“こんなことをやったって無意味じゃないか。しかしこれが人生だ”とある、信仰も善行も自分を救ってくれない、むしろ苦しめる事もあるのかも知れないけど人はそれを行のは何故なんだろう?2021/10/19
あつ子🐈⬛
14
遠藤作品デビューです。読んでいてどんどん辛くなった。いつか再読したなら、また違った感想を持てるだろうか。人間の許されないほどの弱さと哀しさに胸がつぶれる。2017/11/18