講談社文芸文庫
遙かなノートル・ダム

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  • サイズ 文庫判/ページ数 290p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062901765
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

出版社内容情報

「経験」することを哲学の領域に高めた思想家であり、深い思考を重ねたエッセイの名手でもあった著者のエッセンスが詰まった随筆集。

「経験」することを哲学の領域に高めた思想家であり、深い思考を重ねたエッセイの名手でもあった著者のエッセンスが詰まった随筆集。

内容説明

体験ではなく、経験を根柢に―著者の思想的転回点となった画期的な哲学エッセー。ただ自己の体験にとどまるならば安易な主観主義に陥るが、一方、経験は自己の定義へと進む。過去から受け継いだ歴史的なものが、ある機縁により、自分自身とわかちがたく成長していく―この静かな成熟過程、感覚の堆積が経験を生み、経験が思想に結実し、私という人間の定義へと到る。経験という地平から見た、西欧と日本の風景とそこに生きる人々。

目次

1(霧の朝;ひかりとノートル・ダム;遙かなノートル・ダム)
2(赤いノートル・ダム;ある夏の日の感想;パリの生活の一断面;ルオーについて;思索の源泉としての音楽;滞日雑感)

著者等紹介

森有正[モリアリマサ]
1911・11・30~1976・10・18。哲学者、フランス文学者。東京生まれ。祖父は初代文部大臣の森有礼。1938年、東京帝国大学文学部仏文学科卒業。50年、東大助教授の時、戦後初のフランス政府給費留学生としてフランスへ渡る。その後、東大の職を辞し、パリに在住して執筆活動を進め、ソルボンヌ、国立東洋語学校などで日本語、日本文学を講じる。折々帰国したが、同地にて没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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swshght

8
戦後のある時期までは、フランスへ行くことは非常に困難だった。学問のために渡仏するのは稀だった。そのような時代にあって、彼のエッセイ群は、仏文学徒たちにとってのバイブル的な書物だったという。その哲学的思索と「遥かなパリ」の情景に、当時の学生たちは思いを馳せた。彼の思考の軸にあるのは「経験」だ。その「経験」によって定義する不断の運動は、社会、教育、芸術、文明、戦争など様々な局面を論じる上で、一つの座標軸として据えられている。解説にある「一つのイダンティテの感覚」や「遠近法の三つのフェーズ」などの分析も面白い。2012/12/16

吟遊

6
歴史的に蓄積された建築や古典に触れ、長い時間をかけて自ら「経験」したことがらだけが自己を作り上げ、また、美といった「言葉」に定義を与えられる。そんな思想的エッセイ。2016/08/20

ひろゆき

2
思想的エッセイ。昔はよく現国の問題に出されました。経験の重視。当時の平和運動あるいは学生運動が、経験から解離することで、浮わついたスローガンだけになる脆さをはらむことを指摘、忠告している。もっともなことだが、あまり強調しすぎると、そのような言が、政治的状況のなかで、忠告する相手を萎縮させることにはなったのでは。それどころかスコラ的立場への後退への口実に使用されることもあっただろう。そのあたりが無用心であることが、距離を置いて遥なところから眺めていた人なんだな、と思ってしまう。2012/12/26

あんも

1
筑摩版で高校の時読んだ。45年前か。古い書棚を整理していて懐かしく再読。思索と経験をと訴える。概念による頭でっかちではなく経験を重視。このあと起きた学生運動に対する事前のおしおきのような意味かなと。2014/08/27

あい子

0
「オリンピックとか日本の経済的発展とかいろいろ言われるが、それだけではいかにも、あるいは余りにも、不十分なのである。また再軍備や原子爆弾は日本の場合、完全に問題外としなければならない。それは日本の立場を強めるどころか、逆に弱めるものである。(以下略)」1966年発表の「滞日雑感」から。これほど彼の言葉が全く錆びていないことに驚愕するとともに、これまでの半世紀の歩みは何だったのかと呆れかえる。2016/10/25

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