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講談社文芸文庫
ルイズ―父に貰いし名は

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  • サイズ 文庫判/ページ数 381p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784062901345
  • NDC分類 289.1
  • Cコード C0195

出版社内容情報

講談社ノンフィクション賞!

運命の子から、自立した人へ事実に肉迫する記録者の目が人と時代を照射する

国家権力によって虐殺されたアナキスト大杉栄と伊藤野枝。父母の遺骨を前に無邪気にはしゃいでいた末娘のルイズは、父の名づけた革命家の名と“主義者の子”の十字架を背負い、戦前戦後を平凡に生きた。そして、やがて訪れた、一人の自立した人間としての目覚め。一年六ヵ月に亘る聞き取りと事実に肉迫する記録者の視線が、一女性の人生と昭和という時代を鮮やかに照射する。講談社ノンフィクション賞受賞作。

鎌田 慧
この作品のサブタイトルが、「父に貰いし名は」と題されているのは、せっかく両親がつけた革命的な名前を、改名させた社会の圧迫への抗議がこめられている。(略)留意子がルイにもどるまでの喘ぎが、この作品の重い通低音となっているのだが、苦難の生活のなかから、彼女はしだいに両親の活動を意識するようになり、それをすこしでも引き受けようとする。さわやかに自立の道を歩きはじめたルイと出会った著者の感動が、熱烈な取材交渉と長期のインタビューとなって、ここに結実した。――<「解説」より>

※本書は『松下竜一 その仕事17 ルイズ――父に貰いし名は』(平成十二年三月、河出書房新社刊)を底本としました。

松下 竜一[マツシタ リュウイチ]
著・文・その他

内容説明

国家権力によって虐殺されたアナキスト大杉栄と伊藤野枝。父母の遺骨を前に無邪気にはしゃいでいた末娘のルイズは、父の名づけた革命家の名と“主義者の子”の十字架を背負い、戦前戦後を平凡に生きた。そして、やがて訪れた、一人の自立した人間としての目覚め。一年六ヵ月に亘る聞き取りと事実に肉迫する記録者の視線が、一女性の人生と昭和という時代を鮮やかに照射する。講談社ノンフィクション賞受賞作。

目次

第1章 (葉鶏頭;埋葬 ほか)
第2章 (魔子;講堂 ほか)
第3章 (鎖;日の丸の旗 ほか)
第4章 (結婚;満州 ほか)
第5章 (真子出奔;レッドパージ ほか)
第6章 (借金;戸籍簿 ほか)
第7章 (小さな仏壇;生地へ)

著者等紹介

松下竜一[マツシタリュウイチ]
1937・2・15~2004・6・17。作家、市民運動家。大分県生まれ。病気のため大学進学を諦め家業の豆腐屋を継ぐ。20代半ばより作歌を始め朝日歌壇にしばしば入選。69年、『豆腐屋の四季』を公刊、TVドラマ化されベストセラーになる。70年、豆腐屋廃業。上野英信を知り記録文学に目を開かれる。72年から「環境権」を掲げ豊前火力発電所建設反対運動に取り組み、敗訴するも31年にわたりミニコミ誌「草の根通信」を発行(380号で終刊)、全国の市民運動家に交流の場を提供する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

penguin-blue

46
魔子、エマ、ルイズ…当時としては個性的すぎる名を付けた父は大杉栄、母は伊藤野枝。両親は関東大震災の混乱の中、憲兵に虐殺された。軍部が力を持つ天皇至上の世の中で著名な無政府主義者の両親を持つ姉妹に対して世間の目は冷たく、かと思えば父母の仲間からは「英雄の子」として特別視され、良くも悪くも普通に生きるのが難しい中で、父母を恨まず、運命を恨まずただ目の前の生をひたむきに生きたルイズの姿に心打たれる。そしてその道標となったのは型破りな娘の生と死に心痛めつつ、遺された孫達を守り育てた祖父母の深い愛情だったのだと思う2019/05/17

きいち

33
公民館で彼女が立ち上げた活動に引き込んだ職場の若者たちの「おばちゃんが来てからまるで青春のようよ」という晴れやかな言葉が素敵。大杉・伊藤の四女ルイズが、戦前の逼塞から「王丸留意子」を経て「伊藤ルイ」へと自らを見出していく学びの過程を、松下は丁寧に描き出す。影も光も知ったうえでの前向きさが、貧しさも世間もものともせず子供たち孫たちを育て切った祖母ウメから受け継いだものであることも。自分も生涯学んでいこうと思える。◇彼女がその後、地に足つけた市民運動の担い手であったことがわかる鎌田慧の解説と松下の年譜も秀逸。2017/05/17

kawa

32
最近読んだ村山由佳著「風よあらしよ」の後日談的趣きの書。「風よ~」が、関東大震災の混乱の中で憲兵隊に共々虐殺された大杉 栄、その妻・伊藤野枝を主人公とする物語。それに対して、本書はその娘・伊藤ルイの物語。大杉・伊藤の子供たちは、それゆえに脚光と好奇の眼で見られる過酷な人生を歩んだ。親ほどの波乱万丈な人生ではないという評価が一般なのかも知れないが、庶民には思いもよらないそれぞれの人生があった。そんな彼女らにエ-ルを送りたい気分で本を閉じる(1982年刊)。2021/07/14

みねたか@

28
大杉栄と伊藤野枝の四女ルイズの半生を描く。相手に「顔を見るのも嫌だった」と言わせるほどの丹念な取材で、見事に彼女の人物像を描き出している。福岡の今宿という鄙びた土地で人々の視線を浴びながら過ごした少女時代。それでも美しいものに素直に感動し、他人の苦しみを思いやる心を育んだ。子どもを慈しみ、そして周囲のものを慈しむ中で、社会のなかでの不当な扱いに声を上げて行くに至る。学ぶこと、人生を踏み出すことに遅すぎることはない。あたたかく力強い人間賛歌。2018/09/11

パブロ

15
どこかで見た一枚の写真。それは関東大震災のどさくさに紛れて、虐殺された大杉栄と伊藤野枝の遺骨とともに、彼らの幼い子どもたちが並んで写っているもの。その時から私は、殺された二人よりも遺児たちに興味があった。大杉と伊藤が悪魔と呼ばれたことから名付けられた魔子、革命家の名をとったエマ、ルイズ、ネストル。右へと傾く時代に、国賊としての父の名を十字架のように背負い、戦中戦後の波に翻弄されながらも健気に生きる子どもたちの姿には、胸がギュッと鷲掴みにされる。戦中、戦後の時代史としても読み応えがある感動的な一冊です。2013/02/26

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