出版社内容情報
昭和文壇の表裏を目撃した文士の最後の随筆長い不遇時代の最後に『接木の台』『暗い流れ』を著し、文学史に名を刻んだ和田。生涯を貫いた一葉研究の情熱、死の「順番」を待つ感慨などが滋味深く描かれる。
内容説明
「世上のくるしみをくるしみとすべからず」―貧窮の底で筆一本に己を託した樋口一葉。その存在を光とし、長い不遇に堪えた最晩年『接木の台』『暗い流れ』を著し文学史にその名を刻んだ和田芳恵最後の随筆集。生家が破産、石もて追われた故郷北海道の思い出、編集者として接した林芙美子ら作家の愛憎交々の回想、死の“順番”を待つ老年の心境を明澄に描く表題作等52篇。
目次
私の名前
小さな店主
母というもの
十四の春
古停車場の思い出
代用教員のころ
アキアジシリッポ
冷たい雨の札幌
むかしなじみ
旅まわりの子役〔ほか〕
著者等紹介
和田芳恵[ワダヨシエ]
1906・4・6~1977・10・5。小説家。北海道の生まれ。1931年(昭6)中大独法科卒業。新潮社に入社、『日本文学大辞典』編纂、「日の出」編集。編集のかたわら同人雑誌「山」創刊、「格闘」を発表し芥川賞候補となる。41年新潮社退社、『樋口一葉』を出版。その後も一葉研究を続け、全集の編纂他一葉関係の執筆に従う。56年『一葉の日記』(筑摩書房)で日本芸術院賞受賞、63年『塵の中』で直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こじこ
1
「十四の春」は名作。魯迅の短編に通ずるものあり2022/03/01
yoyogi kazuo
1
一葉の研究で有名な私小説作家だが戦前は新潮社で編集者を勤め、戦後は中間小説の雑誌を立ち上げるも経済的に行き詰って苦しい時期があった。そんな和田に手を差し伸べたのが林芙美子だった。小説を書いたら書留で送ってくれと言われいくつも送ったが、林の死後に遺族から渡された封筒はいずれも未開封であったとか。それでも和田は林の心遣いには感謝しているという。苦労人を絵にかいたような実人生を味わい深い筆致で振り返る渋み溢れる随筆集。2022/02/10
悸村成一
0
随筆・批評集。図書館本。2013/11/25
ウイロウ
0
売文稼業という、すたれかけた言葉を思い出させる。捨て身の強さが頼もしい。著者にとっての樋口一葉がそうであったように、読めば慰めが得られ、勇気の湧いてくる一冊。「私は生まれて、このかた、生活設計など一度もたてたことがない。人生の帳尻をあわせる晩年になって考えると、どうやら、とんとんに行っているらしい。つまり、ゼロということである。裸で生まれてきた私が、死ぬとき裸であるのは当たり前のことである。」(「晩秋に思う」)2012/06/07
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