出版社内容情報
講談社文芸文庫スタンダード002(講談社文芸文庫スタンダードは、時代の原基としての存在感をたたえ、今なお輝きを放つ作品を精選した新装版です。)
新人・野間宏、戦後日本に颯爽と登場――初期作品6篇収録のオリジナル作品集
草もなく木もなく実りもなく吹きすさぶ雪風が荒涼として吹き過ぎる。はるか高い丘の辺りは雲にかくれた黒い日に焦げ、暗く輝く地平線をつけた大地のところどころに黒い漏斗形の穴がぽつりぽつりと開いている。その穴の口の辺りは生命の過度に充ちた唇のような光沢を放ち、堆い土饅頭の真中に開いているその穴が、繰り返される、鈍重で淫らな触感を待ち受けて、まるで軟体動物に属する生きもののように幾つも大地に口を開けている。
1946年、すべてを失い混乱の極みにある敗戦後日本に野間宏が「暗い絵」を携え衝撃的に登場――第1次戦後派として、その第1歩を記す。戦場で戦争を体験し、根本的に存在を揺さぶられた人間が戦後の時間をいかに生きられるかを問う「顔の中の赤い月」。他に「残像」「崩解感覚」「第三十六号」「哀れな歓楽」を収録する、実験精神に満ちた初期短篇集。
野間 宏[ノマ ヒロシ]
著・文・その他
内容説明
一九四六年、すべてを失い混乱の極みにある敗戦後日本に野間宏が「暗い絵」を携え衝撃的に登場―第一次戦後派として、その第一歩を記す。戦場で戦争を体験し、根本的に存在を揺さぶられた人間が戦後の時間をいかに生きられるかを問う「顔の中の赤い月」。―初期作品六篇収録。
著者等紹介
野間宏[ノマヒロシ]
1915・2・23~1991・1・2。作家。神戸市生まれ。旧制三高入学後知り合った桑原(竹之内)静雄、富士正晴と同人誌「三人」を創刊し、詩やエッセイ、小説を発表する。1935年、京都帝大仏文科に入学し、マルキシズムに接近する。38年大学卒業、大阪市役所に入り被差別部落融和事業を担当し、部落解放運動家たちから大きな影響を受ける。戦時中思想犯として検挙された後、大阪の軍需会社に徴用される。敗戦後すぐに「暗い絵」の執筆を始め、46年雑誌「黄蜂」に発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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