出版社内容情報
なぜ人間は生きねばならないのか――?
戦後文学のカリスマ椎名麟三の代表的2篇!
焼け残った運河沿いの倉庫を改造したアパートに蠢く住民達。瀕死の喘息患者、栄養失調の少年、売春婦の救いのない生態を虚無的な乾いた文体で描き、「重い」「堪える」の流行語と共に作家椎名麟三の登場を鮮烈に印象づけた「深夜の酒宴」。電車の運転の仕事を熱愛する平凡な男が現実の重さに躓きつつ生き抜く様を特異なユーモアで描く「美しい女」(芸術選奨)。戦後の社会にカリスマ的光芒を放った椎名文学の代表作2篇。
井口時男
この地上にあっては、「愛」も「自由」も「幸福」も相対的で不十分な偽物でしかありえない。しかし、「ほんとうにほんとう」のものとしての「美しい女」は、地上の偽物性や相対性を裁き糾弾するのではない。むしろそれは、まがい物たらざるをえない地上の存在の卑小さや滑稽さを許容し、ゆるめ、やわらげてくれるものだ。裁き糾弾するのは旧約の神だが、ゆるめ、やわらげてくれるのはキリストの「ユーモア」である。――<「解説」より>
椎名 麟三[シイナ リンゾウ]
著・文・その他
内容説明
焼け残った運河沿いの倉庫を改造したアパートに蠢く住民達。瀕死の喘息患者、栄養失調の少年、売春婦の救いのない生態を虚無的な乾いた文体で描き、「重い」「堪える」の流行語と共に作家椎名麟三の登場を鮮烈に印象づけた「深夜の酒宴」。電車の運転の仕事を熱愛する平凡な男が現実の重さに躓きつつ生き抜く様を特異なユーモアで描く「美しい女」(芸術選奨)。戦後の社会にカリスマ的光芒を放った椎名文学の代表作二篇。
著者等紹介
椎名麟三[シイナリンゾウ]
1911・10・1~1973・3・28。小説家。兵庫県生まれ。姫路中学中退。私鉄乗務員等、種々の職をめぐり労働運動に参加するも検束投獄され転向。ドストエフスキーによって文学に目覚め、戦後「深夜の酒宴」でデビュー。ニヒリズムを基調とした実存主義的作風で第一次戦後派作家として注目される。その後キリスト教に入信。著書に『美しい女』(芸術選奨)等(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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