内容説明
敗戦で失職した元海軍大佐の父。時代に背を向け不器用に生きた父と家族の「戦後」を、激情を内に秘めた簡潔な表現で描いた「未成年」(「父と子の連作」の一)。幼年期の記憶のヴェールに揺曳する一情景を繊細な筆致で甦らせる「桃」。阿部文学の通奏低音である湘南の大自然と朽ちていく人の家を対比、早過ぎた晩年の心鏡を刻む「水にうつる雲」。澄明な文体と深いユーモアで人生の真実を描いた阿部昭の名篇十篇を精選。
著者等紹介
阿部昭[アベアキラ]
1934・9・22~1989・5・19。小説家。広島の生まれ。父は第二次大戦中海軍大佐。東大仏文科卒。ラジオ東京(現・TBS)に入社。62年「子供部屋」で文学界新人賞。68年第一創作集『未成年』刊。この頃より作家活動が活発になり、『大いなる日』『司令の休暇』刊行後、TBS退社。著書は他に『千年』(毎日出版文化賞)『人生の一日』(芸術選奨新人賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fseigojp
15
ふくろぐも 昔のいじめっ子が怪しげなハンカチ押し売り営業マンとなって戦後まもないころ 通勤帰りの電車でであう かたくなな拒否の姿勢を察して別れ際 彼のはなつ一言 妙に心にのこる短編 やはり名手か2015/08/27
sk
2
簡潔な文体だが妙に生々しくエロティックである。2020/11/25
shimuratakeda
1
中学の頃だと思うんだけど教科書に載っていた短編がなぜか頭に残ってて、でもなかなか本屋で売ってなくて読めなかった作家代表。電子のおかげでようやく読めましたわい。やっぱりおれ、好きだなってことがよくわかった。内向的でクサクサしてて何も起きないところがしっくりくるぜ。2023/06/16
S‐tora
1
◎ 普段とんがった小説を読む事が多いので、こういう日常の一場面を静かに切り取ったような小説は新鮮だった。2016/10/29
isbm
0
★★★2016/08/29