内容説明
軍国主義から共産主義へと移ろう時代の風に対しつねに反語的精神で佇ち、ルネサンス研究始め知の領域へのあくなき探索の道程で、「批評家と歴史家との幸福な結合」(三木清)を体現した林達夫。若き日の天稟を示す「歌舞伎劇に関するある考察」、ダ・ヴィンチ「聖アンナ母子像」の深遠な謎に果敢に分け入るスリリングな論考「精神史」、最晩年の「遊戯神通の芸術」等、林達夫の核心ともいうべき“芸術へのチチェローネ(案内)”二十一篇。
目次
1 思想について
2 青春
3 雑誌「思想」の周辺
4 庭と家
5 戦中・戦後
6 百科全書派
7 「知」の結晶形
著者等紹介
林達夫[ハヤシタツオ]
1896年11月20日~1984年4月25日。評論家、歴史家。東京生まれ。幼児期、外交官の父の赴任先アメリカのシアトルで過ごす。京都帝国大学文学部哲学科修了。1927年から雑誌「思想」の編集に携わる一方、東洋大学などで文化史、フランス哲学を講じる。45年、中央公論社出版局長、46年、鎌倉アカデミア文学科長を経て、54年より平凡社『世界大百科事典』編集長を務める(58年まで)。56年、明治大学文学部教授となる(63年まで)。72年、『林達夫著作集』全六巻により毎日出版文化賞特別賞、「西洋精神史及び現代文明に対する研究と評論活動の業績」により朝日賞文化賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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魔魔男爵
2
「政治くらい、人の善意を翻弄し、実践的勇気を悪用するものはない。真のデモクラシーとは、この政治のメカニズムから来る必然悪に対する人民の警戒と抑制とを意味するが、眉唾ものの政治的スローガンに手もなくころりとだまされるところにどうでも人が頼らねばならぬ政治のおぞましい陥穽があるともいえよう」芸術以外に文芸も歴史も政治もネタにしてます。林達夫を読んだ事が無い人は必読。2009/06/18
じろう
0
歌舞伎についての論考や精神史はまわりくどいレトリックがちょっと苦手。本人は自分に合わないと言っている自叙伝的エッセイのほうが面白かった三木清は傲慢だったというのは他の本でも読んだことがあるが友人である林の証言には説得力がある。2017/09/07
ミスター
0
含蓄のある文章がつづく大変読みにくいテキスト。あたしはやっぱり花田清輝派だなと思った。2019/09/08