内容説明
父方の祖母が生きた江戸の末期。文学・演劇・音曲等々…。幼い頃から様々な話をとりとめなく聞いて育った著者の心に染込んだ鮮烈な感覚は、滝沢馬琴、河竹黙阿弥、上田秋成、近松門左衛門等を語るその語り口に彷彿とする。殊に秋成の“夢幻と現”の間を描写する文体への言及は、円地文学の根源に呼応。祖母から聞き覚えた沢山の話を鏤め、愛情込めて綴る絶品の江戸文学案内書。
目次
ももんがあ
馬琴雑記
一九・三馬・川柳
四世鶴屋南北―江戸歌舞伎 一
河竹黙阿弥―江戸歌舞伎 二
平賀源内の「根無草」
上田秋成
近松門左衛門
結び―俳句のことなど
著者等紹介
円地文子[エンチフミコ]
1905・10・2~1986・11・14。小説家。劇作家。東京浅草生れ。本名富美。国語学者の家に生れ、幼時より古典に親しむ。読本、歌舞伎など江戸文学にも造詣が深い。始め小山内薫に師事。戯曲集『惜春』刊。のち小説に転じ、「ひもじい月日」で女流文学者賞。著書に『女坂』(野間文芸賞)、『なまみこ物語』(女流文学賞)、『朱を奪ふもの』(谷崎潤一郎賞)、『遊魂』(日本文学大賞)などがある。芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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amanon
3
江戸時代に生まれた祖母に語り聞かされた昔話が文学的素地となった著者による江戸文学解説ということで、そこには他の追随を許さない豊饒さを湛えている。それと同時に解説にもある通り江戸文学が今日ではあまり顧みられないということに時代の趨勢を感じるのも確か。僕の僅か二つ上の世代ではまだ脈々と受け継がれていた江戸時代の文化や風俗が急激に失われているということにもう少し危機感を覚えるべきではないか?そんなことを思わされた。また、古典文学の魅力を伝えることなく文法ばかりに囚われる今日の古文教授法に改めて疑問を感じた。2014/06/09
ダージリン
1
江戸時代の作品には少し関心があって、現代語訳で上田秋成や近松門左衛門を読んではいたのだが、この本を読むと、原文で味わえるようになりたいものだと思わされる。個人的には怪異譚が好きで、御伽婢子なんかも面白いと思うのだが、文学的に見るべき所はないと、円地先生にバッサリと斬られガッカリしてしまった。上田秋成の原文と、八犬伝は是非読んでみたい。2018/06/13
ぶん
0
年末から読んでいてようやく読了。自分の知識がいかに浅いか。今年は江戸文学だなあ。里見八犬伝読みたい!2014/01/07
佐伯りょう
0
再読。手元において、折に触れ読み返したい本。円地の江戸文学案内。愛情溢れる語り口についつい引き込まれ、夢中で読了。幸せな時間だった。 2009/05/10
笠井康平
0
とってもためになるお婆ちゃんの「お婆ちゃんの昔話」2011/07/06
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