出版社内容情報
判型：A6判
頁数：320p
造本・体裁：仮製・薄表紙・カバー
芥川の悲劇を赤裸に描いた貴重な文壇物語。
若き日師事した芥川龍之介の姿を活写した、著者晩年の作。芥川の悲劇を養家への気兼ねと、物語作家から小説家への転身の不可能性に見る独自の論を展開した快作。
内容説明
若き日に師事した芥川龍之介の姿を活写した、著者晩年の作。芥川文学の、漢文脈による洗練された修辞をはじめとした教養主義は、「私」を語ることのできない「物語作家」に彼をおしとどめ、「小説家」へと転身をはかろうとした試みの不可能性を悲劇を読み解く。芥川の作品の持つ窮屈さは、養子・龍之介の養家への気兼ねの表われだとも喝破する。身近に接した芥川を、老成した小説家の眼で捉えた快作。
著者等紹介
小島政二郎［コジママサジロウ］
１８９４・１・３１～１９９４・３・２４。小説家。東京生まれ。慶応大学文学部卒。在学中の１９１６年、「オオソグラフイ」を発表し、三田派の新人として注目される。大学卒業後、「赤い鳥」の編集に携わり、芥川龍之介を知る。その後、母校の教壇に立つ。２４年、『含羞』刊行。以降、作家として活躍。４２年の『眼中の人』は大正文学史の名作と評価が高い。小説家として健筆を振るう一方、古典、俳句にも造詣が深い（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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古古古古古米そっくりおじさん・寺
61
山川直人の漫画『澄江堂主人』を読んだ勢いでこちらも手を出す。小島政二郎という人は芥川を師事していた後輩であり、『龍門の四天王』の一人に数えられているので弟子と言って良い。久世光彦『蕭々館日録』のモデルでもある。山川直人『澄江堂主人』がこの本を参考のひとつにしているのがよくわかる。芥川は物語作家で小説家ではなかったというのが小島政二郎の意見。小島さんは100歳まで生きて、この本を書いたのが86歳ぐらいの事。若い頃と意見が変わるのは仕方ない。永井荷風や今東光、松本清張にも嫌われた人らしい。面白そうな人だ。2019/09/22
那由多
23
長編小説と銘打ってあるが、評論と思い出話しですよ。交流のあった方だけに、主観が入るのは当たり前だけど、独自の評価結論がしばしば極端な印象。しかし芥川龍之介に対する尊敬の念は感じられます。小説と物語の違い、芥川の文章に伸びやかさがない、などは納得。そう、キリキリと締め上げたような無駄を許さない文章ですよね。芥川だけでなく、文人の会話や文や作風や行動にも触れられてて、興味深かった。文子夫人の苦労に心を痛めているところに、著者の労りも見える。2020/02/06
パトラッシュ
14
芥川龍之介については多くの批評や伝記が出ているが、その白眉といえる一冊。著者83歳の作だけに文章が散漫だったり同じ内容を繰り返したりしているが、同時代に生きた作家として芥川の真実を書き残さねばとの思いが熱いほど伝わってくる。何より明らかになるのは芥川の弱さだ。教養主義に囚われて文章の彫琢にばかりこだわった結果、物語は書けても小説は書けない。養子という立場に委縮して奥さんに大変な苦労をさせ、一切を抱え込んだ果てに死を選ぶまで追いつめられた心弱き芥川を描きながら、その筆にこもった愛惜と敬意だけで読むに値する。2020/04/11
fseigojp
11
この本で、小説の名人は徳田秋声と言われています ある意味当たっているでしょう それにしても、この方もお上手でした2015/07/29
ワッピー
10
「小説永井荷風」から飛び移りました。仰ぎ見る天才として、そしてまた友として芥川とともに過ごした青春の記録。大正から昭和に移る変動期の文壇、菊池寛との交友、あまりにも濃い文学論議、そして避けられない最期に向かって次第に弱っていく芥川。そのすごさ、そして裏腹に繊細で気弱な面を真近で見た著者ならではの分析には圧倒されました。純文学なんて、ラノベと同じく時代の趨勢で生まれた一ジャンルに過ぎないと思っていたワッピーですが、物語と小説の決定的な違いを感じられるまで、もっと文学について知りたくなりました。2018/09/06
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