内容説明
呉服についての便利屋であり、染色の仲介業者でもある「悉皆屋」の康吉は、職人としての良心に徹することで、自らを芸術家と恃むようになる。大衆の消費生活が拡大する大正モダニズム期には、華美で軽佻な嗜好を嫌い、二・二六事件の近づく昭和前期には、時代の黒い影を誰よりも逸早く捉える男でもあった。著者が戦時下に書き継ぎ、芸術的良心を守った昭和文学史上の金字塔と評される名作。
著者等紹介
舟橋聖一[フナハシセイイチ]
1904・12・25~1976・1・13。小説家、劇作家。1928年、東大国文科卒。大学在学中の26年、戯曲「白い腕」で注目され文壇に登場。32年から33年「都新聞」に連載した「白い蛇赤い蛇」で劇作家から小説家への転身をはたす。戦後や風俗小説の代表作家と目されるが、官能表現を唯美主義へと高めた純文学の佳作も多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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M
3
悉皆屋は死語…から始まってびっくり!平成の今でも居るんじゃ(゜ロ゜;ノ)ノ 色の和名をネットで調べながら、若納戸が江戸城の襖の色だと知る。バカ殿で観てるあの襖ね! そして、読めない漢字の多さに衝撃Σ(゚◇゚;) 昭和初期の社会にもまったく知識がなく、調べること多すぎ…2016/01/20
スターリーナイト
1
2020-1032020/12/31
パルフェ
1
真面目にコツコツと努力する主人公を描く。 関東大震災後、一心に主人親娘の面倒を見ながら悉皆屋の商売に奔走する姿は馬鹿正直だと歯痒くも思えるが、やっと自分の店を持てた後、社会情勢を一心に読み解こうとする勤勉さに、身をつまされる思いがした。 物語の合間に描かれる悉皆屋の世界や、白生地の地模様や小紋、錦の色彩が鮮やかで着物好きにも嬉しい作品。 主人と奉公人、夫婦、それぞれの支え合いが描かれていないことが、読了後、爽やかさに欠ける所以。2019/05/20
ぎんしょう
1
戦中書き続けられた小説。読んでいて気持ちよかったが、もしかすると女性には解されない話なのだろうか。芸術的良心という語を以て評されることが多いらしい小説であるが、決して芸術家にのみ限定される話ではないだろう。2011/11/16
青猫
0
きもの好きにとっては得るものの多い本だが、思想は古い。2009/10/30
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