内容説明
馬喰・十吉は、海への憧れを一艘の貨物船に託した。一族の悲劇はそこに始まる。甥の余一は、崖から落ちる十吉の愛馬アオに変身し、港町で従姉・佐枝子が自死したという噂を耳にした。駿河湾西岸地方を舞台に、運命に試される純粋な人間の行為を「光と影」の綾なす世界に、鮮やかに刻印する三部作。力強いデッサンによって、海・波・光など自然の原型を焙りだし、重苦しい生の課題を問う小川文学の達成。
著者等紹介
小川国夫[オガワクニオ]
1927・12・21~。小説家。静岡県生まれ。東京大学国文科中退。幼少年期は病弱で、文学に親しんだ。戦後、旧制静岡高校時代にカトリックに入信。1953年大学在学中にフランスに私費留学。単車で地中海沿岸の各地を放浪。56年帰国。57年『アポロンの島』を自費出版し、島尾敏雄に激賞された。『試みの岸』『或る聖書』『彼の故郷』など、簡勁な文体で、魂の原型を描き出し、「内向の世代」を代表する作家とみなされる。86年『逸民』で川端康成文学賞、94年『悲しみの港』で伊藤整文学賞、99年『ハシッシ・ギャング』で読売文学賞受賞。日本芸術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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