講談社現代新書<br> 僕がメディアで伝えたいこと

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講談社現代新書
僕がメディアで伝えたいこと

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  • サイズ 新書判/ページ数 206p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784062882231
  • NDC分類 699.3
  • Cコード C0295

出版社内容情報

ニュース原稿を読むだけのキャスターにはなりたくなかった元NHKアナ・堀潤が語る、ニュース番組の限界と次世代メディアの可能性

NHKのアナウンサーの多くはあらかじめ決められた段取りに従い、リハーサルを何回もしてから本番に臨むというように、決まりきったことしかやらないし、台本に書かれていないことはまず話さない。

そのため、番組では生放送が発するようなハプニング感は感じられないし、中継番組もどこか漂白された感を否めない。

僕にとっては、それがおもしろくなかった。

(中略)

あるお祭りの中継で、実行委員会のAさんに話を聞くシーンでのこと。

彼は、途中までは台本を覚えていたのだろう。

ペラペラと話すことができたが、ある時点で言葉に詰まり、続くはずのコメントが出なくなってしまった。

通常、NHKのアナウンサーならこんな時、「つまり、○○ということですよね?」などと言って必死に取り繕おうとする。

結果、その場には微妙な空気が漂う。

その気まずい雰囲気は、テレビの前のみなさんにも伝わってしまうものだ。

だからその時、僕はこうフォローした。

「Aさん、台本を一緒に読みましょうか。リハーサルしていても、生放送はやっぱり緊張しますよね」

とにかく楽しい放送をしたかった。

嘘をつき、取り繕い、いいように見せかける放送ではなく、正直な放送をしたかった。

だからこそ、こんなふうにテレビの裏側を「ド正直」に流す手法を僕は心がけてきた。(「第1章」より)

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いじめを受けていた小学校時代のあだ名は、「なんでやねん君」。

バイオリンを習わされていた著者は半ズボンを履き、襟付きのシャツを着ていた大人しい「お坊ちゃん」でしかなかった。

就職活動では民放の入社試験に落ちまくり、なんとか入れたNHK時代、街中では「嘘つき」と怒鳴られ、社内では「給料泥棒」呼ばわりされたことがあった。

会議では「黙って原稿を読めばいい」「打ち合わせにないことはやるな」と叱責されたこともあった。

それでもくじけず、あきらめなかった理由とは何か。

元NHKアナウンサー、堀潤の発想と行動の「原点」――。

第一章 NHKで学んだこと
泊まり込みの新人研修/実は落ちまくっていた民放の入社試験/「アナウンサー声」の身につけ方/ニュース原稿を読む難しさ/アナウンサーがいちばん怖れること/公共放送の果たすべき役割/NHKの地方局ならではの仕事/「嘘つき」と怒鳴られて/視聴者への裏切りは謝罪すべき/NHKにとっての伝統や革新とは/いいように取り繕う放送はしたくない/急転直下の異動 ほか

第二章 僕がカメラに背を向けた理由
「チャラチャラしたヤツは現場に行かせない」/「給料泥棒」と呼ばれて/「早く成果を出そうとあせるな」/笑い顔でレポートするな/現場感を伝えるための工夫/「ワンカメ中継」の狙い/『ニュース7』との違い/ストーリーに合ったコメントを欲しがる番組作り/ニュース番組の限界/「ローカル放送じゃないんだ」/物事を一面的には捉えない/「人々に寄り添う」報道への疑問/見逃さなかった一瞬 ほか

第三章 果たせなかったメディアの責任
大企業目線だった『Bizスポ』/「黙って原稿を読めばいい」「打ち合わせにないことはやるな」/ニュース原稿を読むだけのキャスターにはなりたくなかった/僕がツイッターを始めたわけ/閉鎖的な言論空間/使用禁止用語/メディアの責任/真っ赤な嘘/「原発の話はもういいよ」/「君は国家を転覆させようとしているのか」/厚かった「大きな官僚組織」の壁/ツイッター閉鎖 ほか

第四章 僕がメディアで伝えたいこと
公平中立を保とうとするアメリカメディア/キーワードは「オープン」/情報を共有することの重要性/ドキュメンタリー映画を作った理由/ロスで見た「福島の五〇年後」/『きょうの料理』と『女神ビジュアル』/上映会中止命令/再び二二階の大会議室へ/三〇分の退職劇 ほか

【著者紹介】
堀 潤(ほり じゅん)

1977年兵庫県生まれ。NPO法人「8bit News」代表、ジャーナリスト。立教大学文学部卒業後、2001年4月、アナウンサーとして日本放送協会(NHK)入局。岡山放送局を経て、『ニュースウオッチ9』『Bizスポ』など報道番組を担当したのち、2013年4月に退局。投稿型ニュースサイト「8bit News」を立ち上げ、パブリック・アクセスの実現、オープンジャーナリズムの実践を目指している。

内容説明

ニュース番組の限界と次世代メディアの可能性。元NHKアナウンサーが語る“現場で見たこと、聞いたこと、考えたこと”。

目次

第1章 NHKで学んだこと(泊まり込みの新人研修;実は落ちまくっていた民放の入社試験 ほか)
第2章 僕がカメラに背を向けた理由(「チャラチャラしたヤツは現場に行かせない」;「給料泥棒」と呼ばれて ほか)
第3章 果たせなかったメディアの責任(大企業目線だった『Bizスポ』;「黙って原稿を読めばいい」「打ち合わせにないことはやるな」 ほか)
第4章 僕がメディアで伝えたいこと(公平中立を保とうとするアメリカメディア;キーワードは「オープン」 ほか)

著者等紹介

堀潤[ホリジュン]
1977年兵庫県生まれ。NPO法人「8bit News」代表、ジャーナリスト。立教大学文学部卒業後、2001年4月、アナウンサーとして日本放送協会(NHK)入局。岡山放送局を経て、『ニュースウオッチ9』『Bizスポ』など報道番組を担当したのち、2013年4月に退局。投稿型ニュースサイト「8bit News」を立ち上げ、パブリック・アクセスの実現、オープンジャーナリズムの実践を目指している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

hatayan

49
NHKのアナウンサーだった著者が市民型のニュースサイトを立ち上げるまで。初任地の岡山でのフットワークが買われて「ニュースウオッチ9」に抜擢。スクープを連発するも、東日本大震災でNHKの保守的な言論空間に失望。Twitterで率直な思いを吐露するほど組織では腫れ物扱いされ、半ば追われる形でNHKを退社。フリーのジャーナリストとして再出発します。 正論を武器に組織の痛いところを突く部下は、NHKにとっては脅威だったのでしょう。異論や異見に際して排除するか対話を試みるか。組織の度量が試されていたのだと思います。2020/01/07

よこしま

39
声なき声をメディアで伝えていきたい。◆昨日は同じ堀潤さんの原発・放射能についての「変身」のレビューを書きました。しかし、その強い信念とは何か?を記せてなかったですし、そこまでに至った過程を知らず。◆順調そうにNHKに入局できたのではなく、幼少期の頃から苦労されていたそうで。だから虐待やイジメなどの弱い側も視る。そしてニュースウォッチ9で養われた現場主義で、何故にして事件が起きたのか?と真実を探し歩いて聴く力。◆堀さんは必ず両方、いや色々な意見を聞きます。市民も考え発信する真の"公共メディア"を。2015/08/03

おいしゃん

34
現場で起きている声や出来事を、真摯にそのまま伝えたい!という気持ちが強すぎてNHKを辞職せざるを得なくなった著者。ただ原稿を読むだけに留まらないそのエネルギーは、NHKに留まっていてはもったいないと思わせるほど。好きで入社し、NHKを良くするために退職する、という著者にとって、辞職の選択は苦しかっただろうが、間違っていないと思うし応援したい。2023/05/06

さきん

34
NHKに入局してフリーアナウンサーになるまでを振り返り、メディアの在り方に対して持論を述べていく内容。日本のジレンマなど討論番組で気に入ってみていた番組の司会に堀さんが良く務めていたので、興味を持った。最初はちゃらちゃらした感じで相槌がやたら多く、良い印象は持っていなかったが、司会を務める番組は個人的に良質なものばかりなので不思議だと思っていた。NHKの公共性を志向しているそうだが、とても公共性なるものが実現できるとは自分は思えない。公平という価値は作られた物差しで計る想像上の産物だと思う。2018/07/28

megumiahuru

22
ツイッターで「反原発」をつぶやいたことから、NHKを追われた堀潤アナの顛末記。NHK入局から退職に至る心の軌跡が綴られています。短いニュースのために現場でどれほど「地取り」がなされ、人々の声なき声が切り捨てられていっているか。マスコミの舞台裏が見えて実に興味深かったです。 巨大な「官僚組織」の中でもがいて退職に至った経緯は、確かに「堀さん、青いよ!」と突っ込みたくなりますし、もう少し老獪さがあってもとも思いますが、閉塞した時代を本気で変えたいという志だけでも買いたいと思います。今後の活躍を期待します。2013/10/18

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