講談社現代新書<br> 二つの「競争」―競争観をめぐる現代経済思想

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講談社現代新書
二つの「競争」―競争観をめぐる現代経済思想

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  • サイズ 新書判/ページ数 237p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784062881746
  • NDC分類 331.844
  • Cコード C0233

出版社内容情報

競争とは何か? 経済学における変遷をたどりつつ、哲学的思想を参照しながらめぐる競争論のゆくえ。競争は何のためにあるのか?

スポーツやゲーム、受験勉強に企業活動と、私たちの日常には、競争があふれています。では、いったい競争とは何を意味するのでしょうか?
スポーツやゲームでは、ルールが定められ、その競争相手もはっきりしています。一方、受験において、競争相手は無数にいますし、まして企業においての市場競争では、さまざまな相手とのいつまでつづくかわからない競争が繰り広げられます。
本書は、はっきりと自覚しないままに用いている競争の意味を、私たちが競争をもっとも身近なところで感じる経済学の観点から、その体系的な言説を紐解いていこうとする試みです。
経済学での競争観を一言で定義すれば、競争とは、限りある資源をもっとも有効に活用する方法を見つけ出すための手段であり、生産物を適正な価格で社会に分配していくための手段ということになります。すなわち、市場競争は勝者を決めるためのものではないというわけです。
しかし、これは一般市民の直感的な競争観とはかなり違うものと言えます。通常、市民生活において人びとが競争に向ける視線は、批判的で懐疑的なものです。とはいえ、競争がなければ社会や個人の発展・成長がないとする向きも一方であり、立場や状況によって、競争を肯定的にも否定的にも捉えることがあり得るのです。
経済学における競争論の変遷をたどりつつ、ときにアリストテレス、プラトン、フーコーら哲学者の思想を参照しながら、同じ競争と訳される「コンペティション」と「エミュレーション」という二つの競争観をめぐる議論はつきません。
二者択一的な解をもとめるのではなく、競争という概念そのものをあらためて考えなおしてみることに、現代の競争をめぐる諸問題を解決するヒントが隠されているかもしれません。

第一章 競争はよいものか、わるいものか
第二章 伝統的な競争論―完全競争論を考える―
第三章 現代的な競争論―「淘汰」から「模倣」へ―
インタールード‥プラトンと経済学
第四章 コンペティションとエミュレーション―アダム・スミスを再読する―
第五章 競争は誰のために

内容説明

古代ギリシャ哲学からアダム・スミス、完全競争論までその思想の源流をたどる。

目次

第1章 競争はよいものか、わるいものか
第2章 伝統的な競争論―完全競争論を考える
第3章 現代的な競争論―「淘汰」から「模倣」へ
インタールード プラトンと経済学
第4章 コンペティションとエミュレーション―アダム・スミスを再読する
第5章 競争は誰のために

著者等紹介

井上義朗[イノウエヨシオ]
1962年、千葉県生まれ。千葉大学人文学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修了。千葉大学法経学部助教授などを経て、中央大学商学部教授。専門は、経済理論、経済学説・経済思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

momogaga

35
【ブックカフェ】コンペティションとエミュレーション。この二つの競争観を学ぶ事ができた。2023/11/06

ヒダン

12
競争について経済学の観点から考察する。競争には、規模の経済によって寡占市場が起こることを念頭に置いた「淘汰」(とその抑制)としてのcompetitionと覇者は追いつき追い越すための目標、模倣の対象であると考えるemulationの二種類が存在する。emulationはenvyと結び付きやすい、アダム・スミスが元々使い分けていた、こういうことにこの本の議論のきっかけがあったというのが面白い。スミスにとってcompetitionとは自然状態への引力だった。emulationは向上のために必要だが際限がない。2016/08/27

Yasomi Mori

5
近代経済学の「完全競争」概念においては、競争を耐え抜いた結果、各プレイヤーの利潤はゼロになり、新規参入も止むことで市場は均衡状態を得る。――この非現実性は、競争当事者=企業の立場ではなく、受益者=消費者の立場から見た規範論であるためだった。にも関わらず、「完全競争論は現実を反映していない!」と批判され続けており、その流れが現代経済学を形づくるまでに至っている。そのうえで本書は、近代の競争観と現代の競争観を分かつポイントが、「淘汰」の捉え方の差異にあることを指摘する。2020/01/26

Kai Kajitani

3
本書は、アダム=スミスの議論をもとにして、現代社会においては「市場競争」についての全く異なるイメージが混在していることに光を当てている。コンペティションはスタティスティックで「利益の均霑」をもたらすものである。一方、エミュレーションは「情報の伝達」を通じたダイナミックなもので、コンテスト的な側面を持つ。現代経済学の競争概念はコンペティションからエミュレーションを強調する方向に次第にシフトしてきた。それにつれて反独占政策などの基本理念も次第に変化してきている。  2018/04/26

shm

1
前半の平均費用、限界費用まではよかったけど、後半で息切れした。コンペティションは独立的、エミュレーションは進化的、くらいの理解。2014/11/30

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