出版社内容情報
安政の地震、津波でロシア艦船「ディアナ号」は沈没し、乗組員五百人が上陸する未曾有の事態に。誠意を持っての折衝は国を救えるか?クリミア戦争で英仏と戦う祖国を離れて折衝に臨むプチャーチンの艦船が地震、津波で被害を受けて沈没し、乗組員五百人が上陸する事態に。厳しい折衝を終え、幕府の配慮で完成した「戸田号」で帰国の途につくプチャーチン。日露関係のみならず、日本外交史において最大の功労者ともいうべき川路聖謨の生涯。
落日の宴(下)
あとがき
吉村 昭[ヨシムラ アキラ]
著・文・その他
内容説明
クリミア戦争で英仏と戦う祖国を離れて折衡に臨むプチャーチンの艦船が地震、津波で被害を受けて沈没し、乗組員五百人が上陸する事態に。厳しい折衝を終え、幕府の配慮で完成した「戸田号」で帰国の途につくプチャーチン。日露関係のみならず、日本外交史において最大の功労者ともいうべき川路聖謨の生涯。
著者等紹介
吉村昭[ヨシムラアキラ]
1927年東京生まれ。学習院大学国文科中退。’66年『星への旅』で太宰治賞を受賞する。徹底した史実調査には定評があり、『戦艦武蔵』で作家としての地位を確立。その後、菊池寛賞、吉川英治文学賞、毎日芸術賞、読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞、大佛次郎賞などを受賞する。日本芸術院会員。2006年79歳で他界(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
102
プチャーチンとの会談を重ね日露和親条約へ至る川路等幕臣達。アメリカのハリスが来国し日米通商航海条約の締結を求める。それは幕府が続けた鎖国政策の終焉を意味する。世界情勢から幕府は締結を内定するも朝廷は攘夷思想が支配し許さず。安政の大獄から桜田門外の変、生麦事件等の事件が続く。老いた川路は隠居。更に卒中により病臥する。倒幕の動きの中、英邁と信じた徳川慶喜の心労による変節を知り幕府の終焉が近いことを覚る川路。江戸城が明け渡されたとする風聞により川路は自害する。幕府と共にあった川路の生涯。知られざる偉人だった。2021/11/14
yomineko@ヴィタリにゃん
55
ただ只管耐え忍ぶ姿が痛々しい川路。ペリー来航時に来港したロシアのプチャーチン。教科書ではさらっと習って終わるの安政の大獄、井伊直弼の傲慢かつ冷徹かつ頭脳明晰ぶりが描かれており、暗記教育をやめてこういう本を教材にしてほしかったと強く思った。昔の日本人の対外姿勢の素晴らしさ!しかし開国しない訳にはいかない。川路は病苦の果てに切腹したが死にきれず日本で最初のピストル自殺をした。余りにも哀れ。しかし息子の太郎が海外留学。彼はイギリス公使パークスの「西洋かぶれにならず日本の良さを決して忘れてはならぬ」の言葉に感激し2024/12/14
読特
53
地震による船の破壊。帰れないロシア人。紆余曲折。結果的には信頼が深まった。粘り強い交渉で勝ち取った条件「択捉は日本領、樺太に国境を定めない」。交換条約、日露戦争、二度の大戦‥。その後の変遷を思う。過激な攘夷思想、安政の大獄、桜田門外の変…時代は一度壊れた。再興できたのは維新の功労によるものだけではない。政変にも災害にも、滅入らず、粛々と仕事を進める。日本社会はそんな人々に支えられてきた。農を離し、設備を棄却し、情報を奪う。グローバル化の名の下にルールを壊し国を売る勢力が蔓延る現代に求められる人材を考える。2022/09/27
すしな
40
079-24.江戸幕府は官僚的な慣例やメンツに囚われるあまりに、その歴史に幕を閉じる形になってしまったわけですけど、開国に前向きな幕臣たちに疎まれていた、尊王攘夷の立場の水戸藩老公の徳川斉昭の意向に沿って島津藩ではなく幕府が英国かアメリカと戦っていたら、朝廷も幕府側についていたのかもしれないなと思いました。確かに現実的には戦ってもいいことはないですけど、島津や長州は外国と戦って攘夷をやめる空気が醸成されたんじゃないんでしょうか。今の日本ももう少し外国に物を申してもいいんじゃないのかなとも思いました。2024/08/31
たぬ
40
☆4.5 (上巻から続き)川路聖謨という人はとんでもなく高潔だったんだなあ。出世しまくって高給取りになっても決して驕らない。生活は変わらず質素で体力維持のための鍛錬も欠かさない。怒りの沸点が低いハリスやゴリゴリの攘夷派強情ジジイ徳川斉昭ら面倒くさい相手への対応も実に頼もしい。プライドが高いからこそああいった悲劇的な最期を選んでしまったのだろうな。2022/05/19