講談社文庫 ぼくには数字が風景に見える

タメット，ダニエル【著】〈Ｔａｍｍｅｔ，Ｄａｎｉｅｌ〉/古屋 美登里【訳】

講談社（2014/06発売）

• サイズ 文庫判／ページ数 336p／高さ 15cm
• 商品コード 9784062778602
• NDC分類 936
• Cコード C0198

出版社内容情報

円周率はまばゆい風景をもっている――共感覚をもつサヴァン症候群の天才青年が、自分の「脳と心」の内側を初めて語った感動の手記。『博士の愛した数式』の小川洋子さん絶賛！
「思慮深く、優しい声で、ダニエルは私たちにそっと教えてくれる。この世界は、生きるに値する場所である、と」

ぼくが生まれたのは一九七九年の一月三十一日、水曜日。水曜日だとわかるのは、ぼくの頭のなかではその日が青い色をしているからだ。水曜日は、数字の９や諍いの声と同じようにいつも青い色をしている。―――＜本書より＞

ヒゲがうまく剃れない。右手と左手をうまく操るのが難しいから。
人の言葉が聞き取れない。雑音の混じったラジオを聞くように、意味がつかめないから。
代わりに、彼は数字のなかに風景を見ることができる。
円周率22,500桁を暗唱するとき、豊かな景色が彼に正解を教えてくれる。
新しい言語を覚えるとき、文字の色が彼に正解を教えてくれる。

サヴァン症候群とアスペルガー症候群、そして共感覚をもつ、言語と数学の天才青年ダニエル。
他人と違うゆえの「普通になれない」悩みと、それ自体を人と分かち合えない苦しみ。
思春期をこえて、大人になろうとする彼が選んだ「自立」とは。
ダニエルが「頭と心の中」を語る感動の手記。
解説：山登敬之（精神科医）

ダニエル・タメット［ダニエル タメット］
著・文・その他

古屋 美登里［フルヤ ミドリ］
翻訳

内容説明

４は内気で物静か、８９は舞う雪のよう。ダニエルは数字に色や感情、動きを感じる共感覚者だ。円周率２万桁を暗唱し１０言語を操るが、アスペルガー症候群で人の感情が分からない。「普通になりたい」と苦悩する彼が、「人と違う」自分を認めて辿りついた生き方とは。不思議な脳と柔らかな心を持つ青年の感動の手記。

目次

青い９と赤い言葉
幼年時代
稲妻に打たれて
学校生活がはじまった
仲間はずれ
思春期をむかえて
リトアニア行きの航空券
恋に落ちて
語学の才能
πのとても大きな一片
『レインマン』のキム・ピークに会う
アイスランド語を一週間で

著者等紹介

タメット，ダニエル［タメット，ダニエル］ ［Ｔａｍｍｅｔ，Ｄａｎｉｅｌ］
作家、言語学者、教師。１９７９年ロンドン生まれ。サヴァン症候群で語学や計算に高い能力を持ち、２００４年に円周率を２万２５１４桁暗唱しヨーロッパ記録を樹立（のちにミスが判明）。ＴＶドキュメンタリー「ブレインマン」は世界中で大きな話題を呼んだ。現在はウェブサイト「ｏｐｔｉｍｎｅｍ」で外国語学習プログラムを展開。フランスのパリに暮らしている

古屋美登里［フルヤミドリ］
早稲田大学教育学部卒業。翻訳家、エッセイスト（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[mae.dat]

思う所が多過ぎて、大幅なカットは止む無し。著者は自閉症スペクトラムで、健常者（←適切な言い方では無いと思うけど、他に近しい語句を知らないので。知っている方はこっそりと教えて下さい）と協調するのがとても大変。でもその事が、本人の経験を踏まえて理路整然と書かれているの。同じ症状で悩んでいる人達の代弁でもあるんでしょうね。そんな人達の気持ちを汲んで行こう。何より、症状の有無に関わらず、子供にとって最も必要な事は、両親からの理解と言う名の愛情なんだな。ほら、やっぱり紙面が足りない。儂も共感覚体験してみたい！

2021/01/16

[絹恵]

数字や言語記号でしか埋めることが出来なかった心身を、例えようのない愛を抱くことで、新しく埋めていくことが出来るその過程を知ることが出来て良かったです。天才と言ってしまうのは簡単だけれど、それ故のハンデを背負うこともあり、でも何よりも天才と一括りにするのではなく、個を見つめることが大切なのだと思います。

2015/03/10

[あっちゃん]

サヴァン症候群であり、アスペルガー症候群である著者の自伝、普通に小説としても読めるほど読みやすい！引き篭もってだけ居てもおかしくないのに、自ら積極的に行動する辺り凄い！IQが高いんだろうけど、何カ国語も覚えて行く行動力や気力は本人の資質もあるのか？(￣▽￣)

2020/04/18

[たまご]

自閉症スペクトラムでサヴァン症候群の，数字に対して共感覚を持つ筆者の自伝．比喩の少ない，裏の意味の少ない，明確な文章は，自閉症スペクトラムならではの文体なのかもしれません．自分も似たようなことしてた，と思ったり，そう感じているんだ，と思ったり，まったく筆者と共通点がない人を探すほうが難しいのかなと思いながら読みました．自分の力が発揮できるように1歩1歩進む姿，それを支える周囲の人たちには感動しかありません．私には共感覚がないので，ダニエルの感じるπの森に一緒に分け入れないのがとても残念．

2021/12/11

[ndj.]

数字が模様にしか見えなくて異常なほど数学ができなかったわたしには想像もできない世界のことが簡潔で飾り気のない、素直な言葉で綴られている。思春期の頃、学校生活にうまくなじめなかった著者がボランティアでリトアニアへ飛び出していく。そして世界に向かって自分を開き、愛する人に出会い、家族の大切さに気づいていく。淡々と語られる事実の裏側にある家族や周囲の、そして本人の困難はどれほどだったろうか。障害が能力へと開花していくさまが素晴らしい。良い本だった。

2017/01/26