出版社内容情報
幕末期、軽輩の身ながら明晰さと人柄で勘定奉行まで登り詰め、開国を迫るロシア使節プチャーチンと堂々と渡り合った川路聖謨の生涯。江戸幕府に交易と北辺の国境画定を迫るロシア使節のプチャーチンに一歩も譲らず、国境画定にあたっても誠実な粘り強さで主張を貫いて欧米列強の植民地支配から日本を守り抜いた川路聖謨。軽輩の身ながら勘定奉行に登りつめて国の行く末を占う折衝を任された川路に、幕吏の高い見識と豊かな人間味が光る。
吉村 昭[ヨシムラ アキラ]
著・文・その他
内容説明
江戸幕府に交易と北辺の国境画定を迫るロシア使節のプチャーチンに一歩も譲らず、領土問題にあたっても誠実な粘り強さで主張を貫いて欧米列強の植民地支配から日本を守り抜いた川路聖謨。軽輩の身ながら勘定奉行に登りつめて国の行く末を占う折衝を任された川路に、幕吏の高い見識と豊かな人間味が光る。
著者等紹介
吉村昭[ヨシムラアキラ]
1927年東京生まれ。学習院大学国文科中退。’66年『星への旅』で太宰治賞を受賞する。徹底した史実調査には定評があり、『戦艦武蔵』で作家としての地位を確立。その後、菊池寛賞、吉川英治文学賞、毎日芸術賞、読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞、大佛次郎賞などを受賞する。日本芸術院会員。2006年79歳で他界(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
103
幕末。開国を求めるロシアと幕府の協議を描く。幕府側は勘定奉行川路聖謨が中心となりロシアのプチャーチンと息詰まる会談を重ねる。開港、通商は他の欧米列強と共通する。だがロシアは隣国であり、樺太と千島列島の国境問題があった。現代も続く北方領土問題の端緒と言うべきか。ロシア側の武力を背景とした要求に理論と歴史の事実で相対する川路達。その武力に屈しない毅然とした交渉に感嘆する。意外にもプチャーチンがペリーより紳士的だった事がわかる。歴史ある帝政ロシアと新興国アメリカとの差異か。会談中の下田を地震と津波が襲う。力作。2021/11/13
yomineko@ヴィタリにゃん
78
流石吉村昭先生。秀逸です✨✨✨ペリー来航は有名だが、実はロシア艦隊も来港していた。強硬な姿勢のロシア側に対して冷静沈着に交渉を進める川路聖謨(としあきら)。大国ロシアに決して屈しない姿勢は見事!奥様が江戸一番の美人だそう😊彼に随行している通詞なども本当に素晴らしい方々ばかり。老体に鞭打つ筒井も飄々としていながらも締める時はキッチリ締めて川路を助ける。ロシアの司祭は「真に善良な博愛に満ちた民衆よ!この善男善女に永遠に幸あれ!」と祝福を贈っている。下巻も非常に楽しみ。この時期に地震と津波があったんですね。2024/12/02
読特
55
尊王攘夷の志士が主役の幕末。不甲斐ないと言われた幕府の官吏に焦点が当たる。長崎、下田でのロシアとの交渉。頑固過ぎるほどに法に固執し、とことんまで国益を主張する。一つ誤っていれば、間違いなく現代の国勢、そして世界地図も変わっていただろう。その後の展開もあったが、結果として日本という国は残り、植民地にもならなかった。脱法して、私腹を肥やし、国を売る、現代の「政商」達に届けたい。一方、美徳とされた倹約思想。受け継がれてしまった緊縮は今この国に牙を向いている。安政大地震。自然は歴史をどう変えたのか。下巻へ続く。2022/09/24
すしな
46
078-24.ペリーの黒船来航の陰で、日本がロシアと行っていた和親条約の交渉の話でした。いきなり大砲を向けて開国を迫るアメリカに対して、ロシアの外交団は意外にも紳士的で、主人公の川路聖謨との駆け引きも清々しい印象でした。交渉の途中、安政の南海トラフ地震の発生で、下田に停泊していたロシアのディアナ号やその乗員の運命などもドラマティックで、英仏をも敵に回した状態でロシアまでどうやって帰るか?という展開も面白かったです。それにしても強く出る国には弱く、紳士的な国には譲らない日本の姿勢はちょっと残念な感じでした。2024/08/28
たぬ
38
☆4.5 プレゼント交換時のプチャーチンの小芝居…(微笑)国交問題がなければいい友達になれそうなのにねえ。3年ものらりくらりと交わされて英仏など他国の動向も気にしなきゃいけなくて、そこへ大地震で船大損壊→沈没の恐れ。上陸させてくれ船の修理をさせてくれと頼んでも日本側は首肯してくれない。短気者ならとうにブチ切れしてるんじゃない?(下巻へ続く)2022/05/17