出版社内容情報
村上 龍[ムラカミ リュウ]
著・文・その他
内容説明
突然変異の人類“クチチュ”らと共に旅を続けるアキラは、生への執着から解き放たれた人々が猿のように生きる村や、ロボット制御の病院で人間が管理される残酷な姿を見届け、遂に宇宙空間へと向かう。冒険の果てに辿り着いたのは絶望か、それとも希望なのか―。現代社会の行く末を予言する、傑作長編小説。第52回毎日芸術賞受賞作。
著者等紹介
村上龍[ムラカミリュウ]
1952年、長崎県に生まれる。武蔵野美術大学中退。’76年に『限りなく透明に近いブルー』で群像新人文学賞、芥川賞を、’81年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、’96年に『村上龍映画小説集』で平林たい子文学賞、’98年に『インザ・ミソスープ』で読売文学賞、2000年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、’05年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞、’11年に『歌うクジラ』で毎日芸術賞を受賞。小説、エッセイにとどまらず「TOPAZ(トパーズ)」などの映画製作や、サッカー、国際政治、経済に関する著作など、あらゆるジャンルで旺盛な活動を展開している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
76
今世界各国で格差社会の問題が起こっているが、この作品に描かれているのは、究極の格差社会だ。求め続け、求め続けて、その結果がまさか本当にこんな風だとは思わないけれども、それでも、その先には虚しいものしかないのではないかと作家は訴えている。本当にそうなのだろうなあと思うのは、有り余るほどの金と権力を持たない者だけなのか。権力を、金をただひたすらに追い求める者たちにとっては、そんな声も届かないのか。 2020/09/29
眠る山猫屋
56
意図的なタイトル詐欺(笑)クジラ出てこないなと思ったら、そうきたか。枯葉剤への世間の目を逸らす為の捕鯨禁止という話みたいだ。ディストピアを旅してきたアキラは最後には一人宇宙へ。絶望に継ぐ絶望、流されているようにも見えるアキラはキチンとした選択の出来る子だった。召喚者ヨシマツとのせめぎ合いは、実に龍さんらしい迫力溢れる闘争だった。絶望への疾走感(破滅へ、ではない)は村上龍作品の中では控え目だと思うが、宇宙での展開のスピード感は流石。アキラ、きっとネギダール姐さんは来てくれるよ。2020/05/04
ソラ
37
作品内容は絶対面白はずなんだけど、文章が馴染めなくてうまいこと作品世界に入れなかった。敗北感が半端ない。2013/11/16
鈴木拓
26
未来の人間社会──物理的な意味での不老長寿を手に入れた人間だが、社会は成熟するよりもむしろ荒廃し、人の心は成長しないまま、よりエゴが露出した社会となっていた。犯罪者とその子孫たちを隔離し、それ以外の場所で理想的な社会を作ろうとした試みから見えるのは、結局、地球にとってもっとも害のあるものは人間かもしれないという悲しい答えなのかもしれない。 2021/11/11
かえる王子、福岡を救う
25
格差社会、少子化、性犯罪、固有文化の喪失・均一化などの現代社会が抱える問題を、それを克服したはずの未来社会の崩壊を通して上巻以上にリアリスティックに描かれる。物語の展開は割と凡庸。しかし、緻密な描写を通して描かれる未来社会の受け止め方次第で、この小説は凡庸な作品から極上のエンターテイメントに代わる。「半島を出よ」ほどではないが、自分はかなり楽しめた。2014/06/08