出版社内容情報
渡辺 淳一[ワタナベ ジュンイチ]
著・文・その他
内容説明
女性に社会的地位がなかった明治初期、日本初の公許の女医となった女性がいた。その名は荻野吟子。十九歳にして夫から業病をうつされ絶望の淵に立たされながらも、同じ境遇の女性を救うべく世間の遍見に抗して医学を志した。キリスト教への入信、東京から未開の地・北海道への移住など、波瀾に満ちた生涯を描ききった感動長編。
著者等紹介
渡辺淳一[ワタナベジュンイチ]
1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒。整形外科医ののち、『光と影』で直木賞を受賞。’80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で吉川英治文学賞を受賞。作品は、医学を題材としたものから、歴史、伝記的小説、男と女の本質に迫る恋愛小説と多彩で、医学的な人間認識をもとに華麗な現代ロマンを描く作家として、文壇の第一線で活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さよちゃん
20
日本で初めて正規の医師免許を取得し、女医となった荻野吟子( ぎん) が自分の病気を体験し、屈辱的な体験した事が切っ掛けになって、医師を目指すけど、当日はまだ社会的に女性が勉強し、社会的地位を確保する事に対してかなりの偏見や、差別があり、並々ならぬ過酷で、辛い差別や偏見にさらされながらも、見事に念願を果たす。こんなに強い女性はそうそう居ないだろう…と。でも、荻野吟子さんの強い信念と努力する事…そして、どんな困難にも決して諦めない事の大切さ…。只々、感心するばかりでした。
てん06
15
渡辺淳一の作品は、「失楽園」より前のものが良い。実は歴史小説や伝記が非常に良い。日本初の、国家試験に合格して女医になった荻野吟子。しかし女医を志した理由が夫からうつされた性病とは哀しい。女性だからというだけで医学校にも入れず、国家試験も受験できず。それをひとつひとつ乗り越えていったバイタリティと意志の強さに脱帽する。人生の前半と、結婚、キリスト教への入信、北海道への入植という後半のギャップ。最後に、自分の医学が古すぎることを悟ったときの悲しさ。波瀾万丈の人生とはこういう人の人生をいうのだろうか。2015/11/18
湖都
11
日本初の官許の女医・荻野吟子の一生を描いた本。16で嫁いだ吟子は、夫から淋病をうつされたことをきっかけに離縁、悔しさから当時は認められなかった女医を目指すこととなる。どうにか入った医学校での生活が本書でも迫害と言われるほどひどく、医師を目指す男達が小学生のいじめのようなことを平気でやっていることに驚いた。楠本イネ子の本を読んだ時にも思ったが、当時の女性が学問を治めることは身を削ることと同じだ。また、独りでひたすら頑張ってきた吟子が、14も年下の男と再婚し医院を畳んで北海道へやってきたことにも驚いた。2018/06/29
コニタン
4
わが埼玉県民の誇り、日本で女性として初めて女医となった荻野吟子をもっと知りたかったので、読みました。作品とは関係ないけど、埼玉県には医大が無い!何をやっているんだ埼玉県!くだらない大学作らないで、医大を開校しろ!2017/10/30
Tomohei
3
日本で第一号の女医者になった荻野吟子。その道は、果てしなく想像を絶するほどに険しいものだったことが細かく描写されています。時は明治と言えど、まだまだ男尊女卑が払拭しきれない時代。男女平等の現代から考えると、吟子はまさに埋もれた花。どのようなプロセスで女医者として開花できるのか、とても気になり、夢中で読みすすめました。勉学に対する貪欲なまでの執着、見習いたいです。2017/06/02