出版社内容情報
夢枕 獏[ユメマクラ バク]
著・文・その他
内容説明
城勤めを辞したにも拘わらず「釣り船禁止令」のため釣りが出来ない采女は、釣道を極めんとしたという投竿翁の足跡を追う。赤穂浪士討ち入りで敬愛する義父・上野介を失う采女。綱吉の相次ぐ禁令発布に反抗した朝湖は三宅島へ島流しに。愚かで滑稽、しかしロマンと夢溢れる釣りに生きた、激動の元禄の男たち。
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
作家。1951年1月1日、神奈川県小田原市生まれ。東海大学文学部日本文学科卒。’77年作家デビュー。’89年『上弦の月を喰べる獅子』で第10回日本SF大賞、’98年『神々の山嶺』で第11回柴田錬三郎賞を受賞。漫画化作品では、2001年に『陰陽師』(漫画・岡野玲子)が第5回手塚治虫文化賞マンガ大賞、『神々の山嶺』(漫画・谷口ジロー)が第5回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。『大江戸釣客伝』で、’11年に第39回泉鏡花文学賞、第5回舟橋聖一文学賞、’12年に第46回吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
58
「生類憐みの令」のせいで様々な束縛に苦しみ、その息苦しさに江戸の町民たちがあえいでいたからこその赤穂浪士の敵討ちの熱狂。だが、この敵討ちはあまりにも片手落ちな気がしている私には、津軽采女をはじめとする吉良側のもどかしさ不本意さにとても共感した。命を賭して海に向かう釣りバカたちの「狂」と、死の間際まで自分の句を吟味し続けた芭蕉の「狂」と、赤穂浪士たちへの江戸町民の「熱狂」。元禄という特異な時代が見事に描き上げられ、最後に残るのは、そこはかとないもの悲しさ。2017/07/26
優希
48
ようやく物語が見えた気がします。赤穂浪士で父・吉良上野介を失う采女。綱吉が相次ぐ禁令を出すのに、どれだけ禁止したいことがあるのかと思わずにはいられません。滑稽さもありますが、ロマンもある、そんな物語だと思います。2021/12/27
優希
47
下巻になり、物語が見えるのですね。多々の事故が起こる中で、釣り人たちの運命に引き込まれずにはいられませんでした。愚かさと気高さが釣りの世界で描かれるのが面白かったです。2022/04/03
あすなろ
33
上下巻共に一気読み。ただ、登場人物はほぼ不幸である。その要因である生類憐みの令・赤穂事件を挿話としてうまく書き込んでいる。登場人物は皆、生きている間の刹那刹那において楽しみすぎなのか。ただし、采女のみ不幸を囲っている。しかし、彼においても釣りが救いの人生を送る。その他、紀伊国屋文左衛門や朝湖(英一蝶)など、酔狂に生きる風情が描かれ、興味深い。夢枕さん、楽しく執筆したんだろうな。主人公が誰かがイマイチ曖昧だが、そのようなことは関係なく楽しめた。賞を複数受賞しているのも頷ける。大好きな北方謙三氏の解説にも納得2014/02/27
のほほん@灯れ松明の火
26
「生類憐みの令」本当に色んな人の命、運命を変えた法だったのですね。この法へのうっ憤が忠臣蔵を引き起こさせたのかもしれないっていう見方は、新鮮でいて納得できました。そう思うと吉良は時代と民意に殺されたのかもしれません。その吉良を実の父親の様に慕っていた采女にすれば、あまりにも理不尽で虚しく感じたことでしょう…。にしても、「釣り」という こんなにも夢中になれるものに出逢えるなんて、読んでいて怖くもあり、羨ましくもありました。正に『大江戸釣客伝』でした!2013/09/02