講談社文庫<br> 犬と鴉

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講談社文庫
犬と鴉

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  • サイズ 文庫判/ページ数 196p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784062774222
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

徴兵を免れた息子と戦争帰りの父。定職を持たない息子と働き続ける母。逃れようのない歪んだ絆。話題の芥川賞作家の傑作3編を収録。

空から落とされた無数の黒い犬が戦争を終わらせた。悲しみによって空腹を満たすため、私は図書館に篭る父親の元へ通い続ける。歪んだ家族の呪われた絆を描く力作 (『犬と鴉』)。家業を継がず一冊の本に拘泥するのはなぜか、父と息子が抱く譲れない思い(『血脈』)。定職を持たず母と二人で暮らす三十男、古びた聖書が無為な日々を狂わせる(『聖書の煙草』)。

【著者紹介】
1972(昭和47)年山口県生れ。山口県立下関中央工業高校卒業。2005(平成17)年「冷たい水の羊」で新潮新人賞受賞。2008年「蛹」で川端康成文学賞を最年少で受賞、同年に「蛹」を収録した作品集『切れた鎖』で三島由紀夫賞、2012年「共喰い」で芥川賞受賞。他の著書に『神様のいない日本シリーズ』『犬と鴉』『実験』等がある。

内容説明

戦争へ行った父、父を追って戻らない母、取り残された息子。終戦を迎え、黒い犬が人々を牙にかけていく。生還し古い図書館に篭城して悪逆の限りを尽くす父と対峙するため、息子は丘の上の図書館へ通い続ける。父と息子、母と息子の息詰まる絆を描いた「血脈」「聖書の煙草」を同時収録。

著者等紹介

田中慎弥[タナカシンヤ]
1972年、山口県出身。2005年「冷たい水の羊」で第37回新潮新人賞を受賞しデビュー。’08年「蛹」で第34回川端康成文学賞を当時史上最年少で受賞。同年『切れた鎖』(新潮社)で第21回三島由紀夫賞を受賞。’12年「共喰い」で第146回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

優希

44
再読です。濃密な親子関係の物語。とにかく濃くて、父の存在が言葉だけでしっかり伝わってきます。血の匂いが漂っているようにすら感じます。著者は血にまつわる作品を書かせるとどうしてこんなに上手いのかと思わされました。全編を貫く血の匂いに眩暈がします。肌や感覚に染み入る血の感覚が好きだと思わずにはいられない作品でした。2024/06/28

優希

38
父子の関係が濃密に詰まっていると思いました。とにかく濃いです。父の存在ははっきりと出てこなくても言葉でしっかり伝わりますね。戦争から戻り悪逆という形で戦う父の血の匂いが漂ってくるようでした。どうしてこの著者は血にまつわる話を書かせるとこんなにうまいのだろうと思わされます。生々しくはないけれどたぎる血が凄くてクラクラきそうでした。文章からではなく、肌や感覚で感じる血が好きです。息の詰まる絆と血の匂いにただあてられるばかりです。2014/07/23

東京湾

20
奇妙な世界観であり難解な小説である。表題作ほか二篇を収録する短篇・中篇集。全体的に引き込まれる物語で面白くもあったが、振り返ると何の話だったっけなという気分に陥る。まず「犬と鴉」は戦争や鯨のヘリコプターや黒い犬や図書館など、何らかの隠喩ともとれる要素がざっくばらんに散りばめられ、また「悲しみによって空腹を満たす」という表現があちこちで用いられる。ひとえに言えば寓話だろうか。死んだ祖母が語り掛ける数々の言葉は不思議な感じで心に響いた。続いて「血脈」。拮抗する父と子との思いが面白い。「共喰い」も読んでみたい。2016/10/23

片瀬

11
久々に読書しました、まずは田中慎弥。表題作他2篇収録。相変わらず父親の存在は希薄で特別。作者とのつながりをほのめかす表現。『聖書の煙草』が面白かったです。主人公は無職で、母と二人暮らし。警察に強盗と疑われたり、それになりすまそうと逡巡したり。罪悪感に勃ったり(?)。いろいろと信念深い登場人物が出てきて楽しいです。しかし、この人の作品、シーンや比喩表現自体は印象深くて好きなのですが、そこから意味を汲み取るのが難しいです。200ページ未満の本なのに、かなり時間がかかりました。2014/08/08

onaka

11
父子関係を描くことに非常にこだわりを持っている作家のエキスがギュッと詰まった、薄いけど中身の濃い三つの作品を収録。この中ではやはり表題作がいい。戦争が終わって戻って来た父は図書館に閉じこもって、戦後大量に放たれた黒い犬たちや街の人たちと戦っている。病弱の子はその父に会いに行く。悲しみの旨みで腹を満たすために、、なんていう、何とも言い難い異様なイメージに満ちていて難解なんだが、読み進める苦痛はない。むしろじっくり味わいたくなる良品。父殺しのモチーフは現代においてこんな風に更新される。2014/05/29

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