内容説明
戦後数多く生まれた、日本人女性と米兵との混血孤児。その一人ヨシアキは米国人家庭の養子となり、天性の魅力と類まれなスポーツの才能とでスターになるが、心の奥には常に自分の存在への不安、そして母の面影があった。一人の青年をめぐる人々の奇跡のような絆と、戦争の悲しさを浮き彫りにした感動作。
目次
第1章 義明、アメリカへ
第2章 エリザベスサンダースホーム
第3章 新しい家族
第4章 輝かしき日々
第5章 ツギエ・ウシロダ
第6章 恋
第7章 軍隊志願
第8章 戦場にて
第9章 母の涙
著者等紹介
面高直子[オモダカナオコ]
1964年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。現在、テレビ局勤務。夫はテレビプロデューサーの故・面高昌義。2006年に逝去した夫の遺志を継いで、後藤義明(スティーブ・ヨシアキ・フラハティ)と彼をめぐる人々の不思議な因縁について追いかけた『ヨシアキは戦争で生まれ戦争で死んだ』を執筆した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
megumiahuru
49
戦後、混血孤児として生まれ、エリザベスサンダースホームに育ち、アメリカ人の養子となった義明こと、スティーブ・フラハティ。親がいるということ、自分がどこかの国の一員であるということ。その当然の前提を持たない悲しみと痛み。しかし、差別と逆境を越えて、ヨシアキは誰からも愛されるスポーツ万能の好青年になっていった。それなのに…戦争で散っていった若者の話は国籍を越えて辛いですね。戦争は惨いものだということを、改めて感じさせられました。2014/08/19
ひろさん
15
前回読んだのが、「ベルリンは晴れているか」で、太平洋戦争関連本が続いたが、結果として私にとっては前作からのリハビリ本になりました。 前作ではラスト以外救いのない内容にただ辛い思いをしていたが、これは苦境にいながらも周りの人々の愛情でヨシアキが自分とは何者かを探し出せる物語で良かった。ただやはり戦争によって狂わされた事に違いはなく、反戦の思いをつよくしました。 読み友さんの感想からの読書機会を得た事に感謝です。2019/03/11
ののまる
11
切なかった。米兵にレイプされたことで生まれ、「あいのこ」として日本社会から蔑まれエリザベスサンダーホームへ預けられ(捨てられ)、アメリカへ養子として渡り大切に育てられスポーツで活躍するも、時に日本人と差別され、自分が何者か悩みアメリカ人として認めてもらいたいがために、志願してベトナムで戦死したヨシアキ。アメリカでできた初めての親友が本当にすごいいい子で泣けてくる。2024/11/06
lily
9
第二次大戦後に米兵と日本人女性の間に生まれた後田義明は、孤児院生活の中で渡米しスティーブ・ヨシアキ・フラハティとしての人生を歩み、ベトナム戦争で戦死する。米兵による強姦、貧困から孤児院に我が子を手放さざるをえない現状、アメリカにおける東洋人差別、大義なきベトナム戦争…一人の壮絶な物語を通じて、これほどまでに反戦を訴える一冊もそうそうない。名著。子供を孤児院に預ける場面は、子供を持つ親として辛い…2021/01/11
ゆうひ
8
借り本。読む前は重そうなノンフィクションで、気が進まなかったが、読んでみると一気に2時間もかからず読了。文章が優しく淡々としていて、読みやすい。入念な取材のもとに書かれている1人の青年の一生と、彼にまつわる全ての人々のことが鮮明に映像化されて脳裏に浮かんでくる。まるでアンビリーバボーや仰天ニュースを見ているようだった。 戦争に翻弄される中でも、誰しも生活があり、個々の人生がある。タイトル通りハッピーエンドではないが、不思議と満足感を得られる一冊。素晴らしかった。2019/02/10