内容説明
不倫は人生の香水である。時々人生にふりかけて楽しむが、ぷんぷんと匂ってはいけない…そんな不倫哲学を持つ30代のOL、一度も浮気したことのない真面目夫、40歳で初めて不倫を成就させるかもしれない人妻、家庭円満のために浮気するという夫―7人の「視点」から不倫が語られる短編集。
著者等紹介
田辺聖子[タナベセイコ]
1928年大阪府生まれ。樟蔭女子専門学校国文科卒。’64年『感傷旅行(センチメンタル・ジャーニィ)』で第50回芥川賞、’87年『花衣ぬぐやまつわる…』で第26回女流文学賞、’93年『ひねくれ一茶』で第27回吉川英治文学賞、’94年第42回菊池寛賞、’98年『道頓堀の雨に別れて以来なり』で第50回読売文学賞、第26回泉鏡花文学賞、第3回井原西鶴賞を受賞。’95年紫綬褒章、2000年文化功労者に選ばれ、’08年には文化勲章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
91
タイトルが刺激的ですね。それにしてもおせいさんの手にかかれば不倫もドロドロした世界ではなく、笑えるあっけらかんとした恋愛になってしまうのが不思議です。不倫をしてしまうのは夫の責任と割り切り、気になる男性とデートする。その図太さが魅力的にすら見えました。でも、不倫はしても家庭を壊さないという主義がまた何とも言えません。2017/05/12
獺祭魚の食客@鯨鯢
63
不倫をしないことは正義です。不倫に対する代償は社会的信用を失うのは当然ですが、当事者以外の第三者が寄ってたかって叩くのは如何なものか。 儒教的な道徳教育は歓迎されないにも拘わらず、こういう時に三面記事でご都合主義的に持ち出されます。(芸能人の不倫は有名税なのかもしれませんが) 「常備薬」というのは配偶者がやらかした相手へのクスリ(お灸)と取り敢えず使うものとの意味合いだと思います。世には離婚まで行かない仮面夫婦の方が圧倒的に多い。 2020/05/07
Shoji
58
愛憎悪渦巻く泥沼のテーマなのに何ともライトでコミカルな語り口。不倫というものが日常茶飯事、年がら年中どこにでもあるような軽いノリ。目くじら立てず楽しく読めばいいのだ、大人の余裕!。2018/11/14
じいじ
51
何とも刺激的なタイトルの本。表題作を含む7短篇。田辺聖子でなければ、不倫と浮気の話を、これ程面白、楽しくは描けないだろう。表題作は、思わず笑い声がこぼれてしまう面白さ。著者と重なるボブカットの主人公が61歳の初老の紳士に恋をする。初デートは京都でお食事、二人の会話は弾む。惚れた弱みか、夫との対比に弁もさわやか。「そもそも、女に不倫願望を抱かせるのは、夫のせい」だそうです。妻をホメないことも、その一つ。聖子さん、不倫の後押しかと思っていましたが、結論は夫婦は家庭を破壊してはならぬ、ということのようです。2015/06/11
優希
46
7人の視点から不倫を描いた短編集です。不倫というとドロドロした印象がありますが、おせいさんが不倫を描いてもからりとした明るいものへと昇華させてしまいます。不倫ではなく、恋愛という要素に変えてしまうと言っても良いでしょう。2024/05/17
-
- 和書
- 知の英断 NHK出版新書