出版社内容情報
吉村 昭[ヨシムラ アキラ]
著・文・その他
内容説明
ほろびゆく者、その運命の哀れさを克明に描き出した古典の傑作を、吉村昭が、わかりやすく臨場感に満ちた見事な訳で鮮やかに再現。約七十年にわたる平清盛を中心とする平家一門の興亡が、壮大な物語を貫く大きな骨組みをそのまに甦る。時代を超越した真髄を味わえる、いつか読みたかった古典現代語訳の決定版!
目次
平家全盛
鹿の谷
鬼界ケ島
残された俊寛
成経都へ帰る
有王と俊寛
重盛死す
清盛怒る
三歳の天皇
高倉の宮の謀反〔ほか〕
著者等紹介
吉村昭[ヨシムラアキラ]
1927年東京生まれ。学習院大学国文科中退。’66年『星への旅』で太宰治賞を受賞する。徹底した史実調査には定評があり『戦艦武蔵』で作家としての地位を確立。その後、菊池寛賞、吉川英治文学賞、毎日芸術賞、読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞、日本芸術院賞、大佛次郎賞などを受賞する。日本芸術院会員。2006年79歳で他界した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoshida
144
吉村昭さんによる平家物語の現代語訳。一度は読みたかった平家物語。読みやすく仕上がっている。栄枯盛衰。平清盛、木曽義仲、源義経。それぞれが時流に乗り栄える。時流に乗っている間は味方する勢力も多く、万を超える兵力を擁する。時流から外れ味方が去ると一気に数百の兵力に減少する。やはり当時は源氏と平氏と言う二つの武家の元に、地侍が集結していたことが分かる。源氏の嫡流もすぐに絶え、以降は源平藤橘の流れを組む家柄が台頭する。足利や武田、佐竹等。その後、実力者は家系を自称。究極は豊臣秀吉だろう。非常に興味深い作品だった。2020/05/01
ゆいまある
93
物凄い歴史音痴なのだが、町田康ギケイキを楽しく読むために避けて通れず、長い平家物語のダイジェスト版的こちらを。元々は平清盛ちょっと生意気だから懲らしめようぜ的な所から始まったのに、どうして幼い子まで皆殺しなのか。何の恨みもないのに単なる勢力争いでここまでしないといけないのか。虚しいもんである。香川県屋島も舞台になっていたとはチラッと知ってたが、案外長いこと安徳天皇たち屋島にいたのね。なんつーか、当分日本史に近寄りたくなくなった。どうせどれも陰鬱な殺し合いなんでしょ。同じ人間同士仲良くできないのかなあ。2020/08/13
Willie the Wildcat
86
祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり♪知人が本著を推奨したように、著者の文献調査・考察も理解に一助。タラレバでは、やはり重盛の急死。結果、清盛暴走放置。キーパーソンで挙げたいのは、文覚。後白河法王命令書を含め、物心両面で頼朝の挙兵を後押し。印象的なのが、壇ノ浦における源平両家の”矢”自慢。士気高揚を含めた神経戦と解釈。一方、船上での”イルカ”占いと、清盛・義仲共通項の官職没収の件は、どちらもシニカル。思わず苦笑い。随所に垣間見る興福寺と比叡山の存在感も改めて認識。2021/12/27
読特
68
諸行無常。記録文学の名士が描く平家物語。歴史の証跡を辿るのではなく古典の記述そのものを再現する。盗作しているようで後ろめたさを感じたという。膨大な登場人物。それぞれの運命。少ない感情描写の中にその思いを想像する。流れる歴史を一話一話でも完結させてる。全盛期の驕り高ぶり。根にもたれた恨みは衰えた時に表出する。頭を丸め感傷に浸りながら生きる。敗れた後はそれすら許されない。栄枯盛衰。賢者は歴史に学ぶ。権力交代は何某かの進歩をもたらす。…栄えてなくても終わらぬ政権。過ちが正されることもない。現代日本の衰退は続く。2023/09/15
アルピニア
56
解説(清原康正)によると、この平家物語は、吉村氏が少年少女向けに(しかし、内容をおもねることはせず)書いたものとのこと。格調高い文体でありながら読みやすく心にすんなりと入ってくる。抄訳なのがとても残念。吉村氏の訳で全文を読んでみたかったと思う。しかし、詳細に調べて書くタイプの吉村氏にとって、「翻訳する」ことは(まるで盗作のように感じられて)辛かったようだ。平家物語には、様々な死が描かれている。まさに鎮魂の物語であるが、読んでいると、いつかは訪れる「死」を自分はどのように迎えるか・・を考えずにはいられない。2023/10/23