内容説明
昭和二十年、終戦の日に父が自決。それは六歳の数馬に大きな傷を与えた。成人しても信ずるものは、屏風に張る金箔の美のみ。だが、傷を負ったのは数馬だけではなかった。姉・篤子、保玄もそれぞれ不倫関係を重ね、不毛な愛に溺れてゆく。鎌倉を舞台に、滅びというテーマを、愛憎を通して描いた不朽の名作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
108
鎌倉の情景が美しい文章で綴られる立原正秋の長編。昭和二十年の終戦の日に軍人だった父が自決。滅亡の翳を引きずりながら生きてきた、残された三人の姉弟(篤子・保江・数馬)の恋情を描いた力作。内容的には不倫の退廃的にも見える恋だが、考えてみると、これは人間の本性なのかもしれない。著者は、姉弟三人の「性愛」をとおして「生」への執着を語りたかったのではないだろうか。文中、何げなく語られる四季の花々の描写が、心を和ませてくれます。もっともっと立原小説が読みたくなりました。2018/07/10
ジュール
9
著者の一貫した美しい文体に惹かれる。 不破家の3姉、弟。 彫金家の数馬は終戦の時の父の自死が強烈に心に残る。 その時、家にあった屏風に惹かれる。 そして常に滅亡への願望が。 敏子と加代子との虚しい三角関係。 同じく姉の篤子、保子も不倫関係に。鎌倉の古い不破家、父の死にいずれも縛られているのか? 装幀も美しい。2024/12/08
井戸端アンジェリか
4
帯の「純愛」と言う文字に魅かれ購入。うーん........有閑マダム達の不倫話でした。女たちは暇を持て余し、男たちは冷たい。優美さもエロス感もなく、まぁ宜しくおやりなさいな、と読了。2012/12/06
コジターレ
2
読メ登録前に読了。印象深い作品だった。
野暮天
2
この作品が書かれた当時の道徳観だとこの程度で終わったこもしれないが、いまどきの作家が書けばもっと過激な内容になると思う。2015/06/08