内容説明
牧師はかつて死刑囚だった―。サイパン玉砕戦を生き延びたが、捕虜収容所で「アメリカかぶれの売国奴」を殺し、死刑の判決を受けた新垣三郎。刑務所では、英語がわからず一人孤独な日々が続いた。ある日、同房の日系2世がくれた、日本語の『予言の書 聖書通信教育』を手にしたときから奇跡が始まった。
著者等紹介
毛利恒之[モウリツネユキ]
作家。1933年福岡県生まれ。熊本大学法文学部卒。NHKライターを経て、フリー。1964年、脚本『十八年目の召集』で第1回久保田万太郎賞を受賞。ドラマ、ドキュメンタリー、小説など、戦争と戦後問題をテーマとする作品が多い。小説『月光の夏』(講談社文庫)は自らの企画、脚本で映画化し、映画(神山征二郎監督・仕事)は200万人を動員するヒット作となった。オーディオドラマ『ヒロシマの黒い十字架』(中国放送)は2000年度文化庁芸術祭大賞ほかを受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うたまる
0
「サイパン戦の玉砕のとき、私は追いつめられて、マッピの断崖の上にいました。そこは地獄でした、生き地獄でした…。そこで、私は、見ました、虹を…。海に立つ虹を…。地獄の虹を…」……サイパン戦後、一度は死刑囚となりながら生還し牧師となった人の回顧ドキュメンタリー。前半の退却を再現する部分は読み進めるのが辛く、浮かれた戦争酔いなどあっという間に醒ませてくれる。一方、後半の”奇跡”とキリスト教への傾倒には戸惑いを覚えたが、そんなところで本書を評価すべきではないんだろうね。とにかく、目の前の事実に向き合うのみだ。2015/04/30