内容説明
正義の原理―「公正としての正義」はどのようにして達成可能か。「最大幸福原理」のみを追求する功利主義の克服をめざしたロールズは、社会契約説を現代の視点から再構成した「正義の二原理」を提唱する。―選挙権・被選挙権を保障する政治的自由、言論・集会の自由、思想および良心の自由等の「基本的自由の権利」は平等に分配されること(第一原理)。(1)公正な機会均等を確保したうえで、(2)最も不遇な人びとの暮らし向きの改善を図り、社会的・経済的な不平等を調整する(第二原理)。この画期的な分配原理こそ、“自由で平等な人びとが友愛の絆で結ばれた社会”を実現する出発点になるだろう。
目次
プロローグ “ジャックの世界”へ―架空インタビュー
第1章 生い立ちから学位論文まで―一九二一~一九五〇年
第2章 公正としての正義へ―一九五〇年代
第3章 時代への応答―一九六〇年代
第4章 『正義論』の宇宙
第5章 毀誉褒貶の嵐の中で―一九七〇年代
第6章 戦線の縮小?―一九八〇年代
第7章 『政治的リベラリズム』の地平―一九九〇年代
エピローグ 抵抗・倫理・契約―新しいミレニアムに向けて
著者等紹介
川本隆史[カワモトタカシ]
1951年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。文学博士(東京大学)。東京大学大学院教育学研究科教授。専攻は倫理学・社会哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
41
倫理学の本を紹介する立場からすると、懐疑の目に対していかにその本を擁護するか。恐らくその視点が無いため、本書は物足りない印象を残しています。本来ならば思想家の人生とその思想を紹介するのに懐疑の視点は必要ありませんが、リベラルが退潮している現在はなおさら必要とされているのかも知れません。その点は最近出版された中公新書『ジョン・ロールズ』に譲るとして、『正義論』が電子書籍化されたようで非常に読み易くなった折、本書をきっかけとして読んでみたいと思います。2022/03/19
またの名
14
方々から諸悪の根源のごとく批判されるリベラルの、というかより理論的に洗練されたリベラリズムの大御所を解説。米国哲学それも政治思想に関する議論はかなり地味な文面になりがちなところを、サブカル雑誌のようなノリの架空インタビューで書き始めたり、最後の方に用意した広島原爆展論争の記述をあとのお楽しみと何度も告知するなど、読み手のことを考えた工夫がいっぱい。とはいえ本格的な議論はやはりとっつき易くないので、頑張って読まないといけない。リベラル批判をするにもとりあえず乗り越えなければならないのがロールズの『正義論』。2017/06/22
白義
6
著者の川本さんが正義論の読める翻訳をするまで、正義論を理解する最良の手段がこの本を読むことでした。そのくらいロールズの伝記、思想、キーワード解説までまんべんなく完璧に解説書として形を成している理想的な本です。正義論の要約もあるので正義論のお供にするのがいいでしょう2011/06/16
チュメニ
3
ロールズの生い立ちやその道徳理論、更にはロールズ本人へのインタビューやキーワード解説まで盛り沢山の内容だが、一方で代表作『正義論』の解説は駆け足気味で物足りなく感じた。2017/01/30
sayan
3
正義論(ロールズ)に取り掛かる助走として読み始める。ロールズの課題は「功利主義の再検討(社会の諸慣行の価値を理由づける際の原理は、ただ一つ功利の原理=最大多数の最大幸福しかないものかどうか)」として、功利主義との対決が解説される。p.130-131「公正としての正義」のライバルとして、功利主義の正義観が検討される。p.122-123「生まれつき恵まれた立場にある人びとは、恵まれない人びとの状況を改善するという条件に基づいてのみ、自分たちの幸運から利益を得ることが許される」は、社会起業の発想に近く興味深い。2016/09/16
-
- 和書
- 中流意識 - エッセイ集