内容説明
最愛の夫と息子を国家に奪われた一人の女性。彼女は「主体思想塔」を設計した北朝鮮の超エリートだった。だが、妻として母として味わった悲劇は、彼女の国家に対する忠誠心を徐々に変えていった。そして、ある「決意」を固める。世界中に脅威を与え続ける独裁国家の「闇の部分」を克明に暴く問題の手記。
目次
序章 ソウルからの手紙
第1章 少女時代
第2章 あこがれのピョンヤンへ
第3章 愛の誓い
第4章 輝く金日成バッジ
第5章 夫の死
著者等紹介
張仁淑[チャンインスク]
1940年北朝鮮咸鏡北道生まれ。ピョンヤン運輸大学卒業。設計技術者としてキャリアを積み、「主体思想塔」「アンコル立体橋」ほかの建築物設計を行い、朝鮮労働党のエリート党員としても大きな実績をあげる。ところが、ウクライナに留学していた長男が韓国に亡命したために、’90年末にピョンヤンを追放され、最北端の地・穏城に強制移送。’97年9月、韓国に亡命、現在にいたる
辺真一[ピョンジンイル]
1948年東京生まれ。明治学院大学英文科卒業。10年の新聞記者生活を経て、’82年朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現在編集長。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで評論活動。朝鮮半島ウォッチャーの第一人者として知られる
李聖男[リソンナム]
1946年山口県生まれ。朝鮮大学校理学部卒業。朝鮮新報社「ピープルス・コリア(スペイン語版)」記者として活躍後、’77年に独立。現在貿易業を営むかたわら、翻訳家として活動
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感想・レビュー
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うたまる
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1997年豆満江を超えて脱北した朝鮮人女性の手記。上巻は誕生から結婚、夫の死までで、北朝鮮での日常が中心に描かれている。では、この北朝鮮の日常がどういうものかというと、日本人の感覚では刑務所がそれに近い。朝から晩まで毎日雁字搦めに監視され、例えば歓迎を意味する”一号行事”では沿道に整列し、感激の涙を流し、声が枯れるまでマンセーを絶叫することが強制される。その際の待機は5~6時間、大雨大雪も関係なしだという。指導者の「わが人民はまことに素朴で純真です」という言葉は、家畜の従順さを褒め上げているに過ぎない。2016/12/28