内容説明
大奥での「秘め事」を胸に商家に嫁いだ美代。戊辰の戦に狂わされた過去を捨てて生きる律。苦界から大料亭の女将へのし上ったお倉。江戸から明治へ、維新の混乱に翻弄されながらも、女たちは「時代の橋」を越えた。しかし、行く手には再び戦雲が漂う…。激動の時代をたくましく生きた、三人の女の物語。
著者等紹介
平山寿三郎[ヒラヤマジュサブロウ]
1933年東京都生まれ。千葉県立佐倉高校卒業後、出版販売会社勤務を経て、’61年、外食産業会社に転職。’93年に定年退職を迎えた後、小説の執筆に取りかかる。’98年、『東京城残影』で第9回時代小説大賞を受賞。“65歳、文学老年デビュー”と脚光を浴びる
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感想・レビュー
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kaoriction
16
大奥女中の誇りを捨て商家に嫁いだ美代。戊辰戦の哀しい過去を捨てて生きる律。苦界から大料亭の女将へのし上がった実在の人物、お倉。幕末明治。維新の混乱に翻弄されながら「時代の橋」を越える3人の女たち。江戸物も悪くはないがやっぱり私は明治物が好きだ。逞しく生きる女たちの姿にいつも清しさと勇気をもらう。「いつまでも昔にとらわれていては人は生きてはゆけません」律の言葉はきっと自身に言い聞かせるためなのだ。その言葉を胸に渡る橋。向こう側の世界。伊藤、大隈、木戸、西郷。時代が動いてゆく場面にページを繰る手も止まらない。2013/05/27
真理そら
11
元大奥女中で、2人の子持ちの商人の後妻になった美代。戊辰戦争での暗い過去を持つらしき律。花魁から大きい料亭の女将として凄腕を振るうお倉。三人の生き方はすべて逞しく小気味いいほどだし、彼女たちに関わる男たちもすべて魅力的だ。最もドラマチックで逞しいお倉だけは実在の人物らしい。大奥を出た女たちがどのように生きたのかということの一端が窺えてうれしかった。また、幕末物の中でさえ影が薄い家茂が可愛く生き生きと描かれているのも楽しく読めた。2018/04/25
cucciola
1
混乱の明治を力強く生きた男と女の物語で、男性が書いたにもかかわらず非常に繊細な文章で読みやすかったです。2009/12/28