内容説明
奉行所検屍役・美馬正哲。身投げや殺し、首縊り…。屍の末期の無念を解き明かす彼を、ひとは「おろく医者」と呼ぶ。武器は、遠く紀州は華岡青洲に学んだ最新の医術!江戸の「法医学者」は恋女房、産婆のお杏とともに、八百八町の底に渦巻く愛憎に立ち向かう。人の生と死に触れる夫婦を描く傑作事件帖。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年函館生まれ。函館大谷女子短大卒。1995年、「幻の声」で第75回オール読物新人賞を受賞。2000年、『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞受賞
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時代小説大好き本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
じいじ
101
「宇江佐作品にハズレなし!」。期待通りの面白さ、しかも今作は、密室でのお妾さんの死が殺人か?自害か?を探索するミステリー仕立てです。主人公は所帯をもって5年目、産婆のお杏とおろく医者(今でいう検屍医)亭主の若夫婦。何たって八面六臂で大活躍するお杏の気風が気持ちいい。蛸入道のような亭主とも相思相愛、相性もピッタシです。宇江佐さんには珍しく、夫婦の睦み合いもそっと書き添えてくれています。おもしろ要素満載の時代小説。宇江佐ファンは言うに及ばず、初読みの方にもお薦めの一冊です。2018/10/25
ミカママ
83
久しぶりの宇江佐さん。時代モノってだけじゃなくて、当時の検屍官である正哲と、そのお内儀である産婆のお杏が解き明かしていくミステリーであり、ちょっぴりお色気(この夫婦が、ちゃんと恋愛してるんです)あり、と盛りだくさん。お江戸の風情を楽しみながら、すっかり正哲夫妻のファンになってしまった。タイトルもまた、ちょうど季節のものだし。それにしてもラスト、お杏ちゃん、よかったねぇ。2015/02/19
ふじさん
81
「おろく医者」と呼ばれる正哲と産婆お杏夫婦が織りなす、変死と出産という人生最大の悲喜劇の日々を懸命に生きる人生を描いた異色の作品。「おろく医者」とは、身投げや殺し、首縊り等、死体の検視の仕事を担う医者のことだが、その存在を示す記述は見つかっていない。江戸時代の医学の実情や実在した華岡青洲、杉田玄白が登場し、話に現実味が出て来て興味が沸いた。江戸の下町の人情噺に、捕物の楽しさと人の生と死に触れる夫婦の有り様が温かいタッチで描かれており最後まで一気に読み切った。作者のあとがきもなかなかいい。2025/06/05
はつばあば
62
女性のおろく医者かと興味津々だったのに(^^;。闇医者おゑんのところで気になった本。以前から読み友さん達からこの本の評判がいいのは知っていましたが、私の知らない宇江佐さんなんて・・へそを曲げていました。これは今迄の宇江佐さんと違ってほのかに夫婦のイトナミもあり、おゑんさんと違ってお産を主とし・・年の離れた亭主に可愛がられたお杏・・。いやいやこの本は夫唱婦随?割れ鍋に綴じ蓋?で生を生業とするお杏と死に携わる正哲の、屍の無念を解き明かす法医学の初版本のようなもの。2019/01/15
ぶんこ
62
事件・事故で亡くなった人の、屍体が語る言葉を読み取る監察医の正哲と、産婆のお杏夫婦。大きな体と坊主頭の正哲ですが、気は優しい。徹夜をした妻の代わりにご飯を作ったり、洗濯もするとは、惚れました。そんな人としての優しさを持っているから、亡くなった人達の気持ちも汲み取れるのでしょう。夫婦仲良く、正哲の両親や兄弟とも仲が良くて、お杏さんも言いたい事は言って、サバっとしていて素敵です。美代治のような、外面が極端にいい人、いますね。私では見分けられないでしょう。華岡青洲や杉田玄白の医師の良心には頭が下がりました。2015/11/30