内容説明
愛とは、追っても逃げる陽炎のように不確かなものなのか。裕福な父の庇護を受け、何不自由ない生活をしてきた貴代子。だが、彼女は人妻でありながら、学生時代の友人と一夜をともにする。夫婦、親子、兄弟、あらゆる人間関係がはかなくも崩れ落ちていく。愛し愛されることの困難を鋭く描いた傑作長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
104
藤堂さんの描く家庭。平穏の下に隠された怒涛の暮らし。でも、その怒涛はほんの些細な、それも誰も気づかないうちに大波になっている。舞台が札幌になっているけれど、特に札幌の風情を感じることもなく。ただ、身近な地名が出てくると、あっ札幌だったと気づく感じ。きっと、東京から離れたところでもこういうことが起こりうる・・・と言いたかったのか。事件は都会に限らない。家族愛は時に憎しみに変わる。そして誰かのためと言っていることは実は自分のためでもある。子育てや人と接するときにその落とし穴にはまらないように気を付けなくては。2013/05/19
青豆
3
裕福な父親の庇護の下で何不自由ない生活を送り、理解のある夫や手のかからない息子、気の置けない友人がいて幸せなはずなのに何故か虚しさを覚えてしまう主人公の貴代子。皆が愛してるのは皆が望んでいる貴代子像を無意識に演じている自分。愛情の共依存のバランスが崩れ家政婦が彼女に向ける過剰な愛情が暴走していく様は何とも恐ろしい。2014/03/27
サワラ
1
これだけ人間関係爛れてたら事件が起きないはずがない。そのシチュエーションでなんら成長しない主人公の鬱陶しさは半端ない。2009/03/06
なお太郎
1
常識では考えられない人間模様。こうした特別な状況でのストーリーが作者の上手いところだ。2009/03/04
peewee60s
0
やっぱり最後はこうなってしまったか、という衝撃の結末が悲しかった。善意(最後の方は善意と呼べないけど)のもたらす圧力をもう少し早く主人公が解決していれば、と思わずにいられませんでした。普通に考えると関係が続くこと自体がありえない人間関係(前崎、辻沢、夏子、多重子)なのですが、主人公が信頼を置く様子に心地よさと切なさをおぼえてしまう不思議な感じでした。2009/10/03