内容説明
このハガキ絵だけが、夫の生きた証しでした。戦争で断ち切られた新婚生活、画業への夢。『無言館』に続く戦没画学生「祈りの絵」。金沢市粟崎の部隊から、フィリピンの戦地から、51通のハガキ絵で綴る心の絆。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Shoko
14
図書館。偶然、手に取った本でしたが、すごく良かった。前田美千雄さんという画家が戦地から妻へと送った絵葉書をまとめたもの。淡い色使いに優しい線、透明感のある絵は戦地からの絵葉書とは思えず、普通の幸せな旅先からのもののよう。文章からはユーモアが感じられ、妻に不安を抱かせないようにという、心配りを感じました。 『「こんなつらい時代だからこそ せめて、ゆとりの心だけは忘れずにいよう」といつも言っていた彼が美しい花の絵を送ってくれるたび 切なさに胸がつまりました』の一文に涙が滲みました。2016/10/29
emi*
9
図書館で目に留まった本。戦時中の貴重な723通の美千雄さんから絹子さんへの絵手紙。絵心があるって、本当に素晴らしい。こうして残しておいた絹子さんの深い愛を感じました。無言館も読んで見たい本に登録。2013/03/03
りるふぃー
4
戦争のことはお年寄りに聞きづらいです。また、辛い思い出を語ってくれる方は少ない。でもこの本には、その時の若い新婚夫婦の、熱い気持ちも悲しみもすべて、溢れんばかりに詰めこまれていました。時間や空間を超える位の強い気持ちの力を感じます。美大卒の旦那さんは、戦地でも美しいものを愛でる気持ちを忘れてはいませんでした。文章だけでは伝わらない気持ちも、絵ハガキから滲みでていました。死ぬ側の苦しみ、残された側の苦しみ…日本中、世界中で流された涙の量はどれだけあったことだろう2017/05/01
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