出版社内容情報
京極 夏彦[キョウゴク ナツヒコ]
著・文・その他
内容説明
夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?著者会心のシリーズ第三弾。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
461
またまた、やってくれました京極先生! まさか物語の冒頭が独白で始まるとは、恐れ入りました。文芸評論的にいえば、独白という手法は信用のおけない本人だけの真実。必ずしも虚構ではないが、あくまで主観的視点であり、極めて客観性にかける。とどのつまり真実と事実とのキャップが存在する。さらにフロイトの個人的な無意識、性に対する精神分析と、ユングの個人を超え人類に共通しているとされる集合的無意識の対立を描き、そして極めつけは真言立川流―― と文芸理論的レビューで貫こうと思いましたが、すると物語の本質に迫ってしまう…… 2016/06/15
nobby
206
まさに潮騒に“静”が漂う序盤と、怒涛な“動”の後半の対比が味わえる。何度も夫を殺し首を切ったと訴える女。それに関わる男達に巡るのは夢か想起か幻想か…フロイトな心理学要素の流し読みは想定通り(笑)同一人物の描写に何か違和感ありモヤモヤ読み進める。中盤で次々描かれる金色髑髏や山中集団自殺、そして後醍醐天皇まで全く関連性感じ得ぬ事柄の拡散ぶりに圧倒される。ようやく600頁過ぎて京極堂の本格登場してからの見事な憑き物落としは爽快。これだけのボリュームながら全く無駄のない伏線回収にはただただ脱帽…2017/07/25
はらぺこ
137
榎さん最高!シリアスなシーンをぶち壊すセリフは緊張と緩和が効いててオモロイし、今回は正直カッコイイと思った。 今回の主役(?)伊佐間は超常音痴・心霊音痴で行動は何故か可愛く思える。 主要人物以外の登場人物が多いのでメモを取りながら読んでて正解やった。人数的には1日や2日で読み切るならメモは要らない程度。 まだ3冊目やけどページ数が1番薄っぺらい『姑獲鳥の夏』で挫折せずに読み続けて良かった。 次の『鉄鼠の檻』は更に分厚いが楽しみや。2011/01/17
ちょろこ
128
ラストシーンが忘れがたい一冊。これだけのものをどう収束させるのか、ひたすらページをめくり続けた。息づかいしか聞こえない暗闇のお堂。憑物落としに自然と増す緊張感。脳裏に浮かぶのはいく本もの川。夢と現、狂気、陰鬱さを携え蛇行し、濁りが増す。やがて全てが混じり合い、一本の大きな川となる。そして悲しみ、愚かさと共にようやく冬の鈍色の海へと還っていく。まさに京極堂が全ての思いを海に還し緊張感から解放されたそんな瞬間だった。忘れがたいまるで潮騒の拍手に包まれたかのような朱美のラストシーン。心臓がドクン。(1000)2019/07/21
白いワンコ
123
百鬼夜行シリーズ再読第2弾は、当時どうしても鮮烈な印象を持てなかった本作。これでもかと広げきった網で一気に謎を救い上げる構成が原因かと途中まで思いきや、850頁を越えてから、トリックの本質を読者の視覚の欠如に頼ったせいかと思い直した。とはいえ二度目は伊佐間や降旗の所作に慣れ、当時よりも安らかな気持ちで読了。さぁ、次は何を…2020/05/22