出版社内容情報
島田 荘司[シマダ ソウジ]
著・文・その他
内容説明
失われた過去の記憶が浮かびあがり男は戦慄する。自分は本当に愛する妻子を殺したのか。やっと手にした幸せな生活にしのび寄る新たな魔の手。名探偵御手洗潔の最初の事件を描いた傑作ミステリ『異邦の騎士』に著者が精魂こめて全面加筆修整した改訂完全版。幾多の歳月を越え、いま異邦の扉が再び開かれる。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
432
流石に3回目ともなると初めて読んだ時の感動、衝撃は薄められて胸に飛び込んでくる。しかし、何度読んでも胸に残るものは確かに、在る。今回特に想ったのは、人を計算された駒のように扱う本格に対し、島田なりにアンチテーゼを示したかったのではないかという事。それは石岡が御手洗から真相を明かされても頑なに否定した一節に表れているように思える。女が男を愛した、その本統の気持ちは計算などでは生まれない黄金でありたい。2009/03/08
青乃108号
311
記憶を失った男の、長い長い物語。現れる1人の女、良子。若くて美しく、どこまでも尽くすタイプの女。何と羨ましいシチュエーションであろうか。以降語られる物語は非常に良く練られていて読者を引き付けて離さない。読後の印象も悪くない。御手洗潔が魅力的。長い事生きていれば色々なしがらみやら何やらでどうにもやりきれない気持ちになる事もあるけれど、人間、その気さえあればやり直しはいつでも出来る。1度何もかも捨て去る勇気さえあれば、いつでも新しい自分を手に入れる事は可能なのだ。俺はそうして今ここにいる。今、俺は生きている。2022/01/12
勇波
259
小説を読む事の楽しさを初めて教えてもらった作品。。今まで読んだ小説の中でも三本の指に入ります。終盤の怒涛の疾走感には再読しても感動。天才益子秀司の再登場を是非ともお願いしたいです★2014/05/25
シロップ
165
初めて書いた小説とは思えないクオリティの高さ。しかも着想が自分の日常の生々しいピースを切り刻み、小説に組み替えているという事が驚きでした。そこに対比するように「御手洗」という変わった人生観を持つ人物が友人として存在することでこの息苦しい日常から自分を救ってくれるという思いが凄く伝わってきました。一人の天才によって緻密に仕組まれたストーリー。こんなに感情を揺さぶられる小説に巡りあえて幸せです。赤い糸は存在する。「異邦の騎士」というタイトル秀逸です!御手洗シリーズ読み進めなければ!2018/09/02
ゆのん
150
御手洗潔シリーズ4作目。まだ4作しか読んでないが一番面白かった。公園のベンチで目覚めた男の記憶がなくなっているところから物語は始まる。この名前も分からない男の視点で進行するのだが読者である私も何が何やら。主人公と一緒に街を彷徨い歩いている錯覚に陥る。街や店、アパートなどが克明に描かれているせいか。それもそのはず。作者自身の若かれし頃に過ごした実際の場所ばかりなのだ。ミステリーを読むと同時に島田荘司の青春の1ページも読める。バディの石岡君についてはネタバレになるのでここでは書かないでおこう。2018/06/13