出版社内容情報
【内容紹介】
祖父 幸田露伴、母 文との日々(芸術選奨文部大臣賞)
昭和13年幸田文は離婚し、娘の玉を連れ青々と椋(むく)の枝がはる露伴の小石川の家に戻った。万事に愚かさを嫌う祖父の小言の嵐は9つの孫にも容赦なかった。祖父の手前蹴とばしても書初めを教える母。「2度はご免蒙りたい」10年の歳月をクールにユーモラスに綴り、晩年の露伴、文の姿を懐かしく匂い立たせる。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tsu55
19
離婚した母・幸田文とともに父・露伴のもとで暮らすことになった、小石川の家での思い出を綴ったエッセイ。 老いてますます頑迷になる父露伴に仕え、支えながら、一家を切り盛りする母。 祖父露伴を尊敬しながらも、厳しい躾に心の中では反発する孫娘の玉。 「幸田露伴の最高傑作は幸田文」とよく言われるけれど、文さんは芯の強い女性だなあと思う。2025/03/18
fubuki
12
かなり以前の【再読】その時は読み切れなかった。あまりにもしつけが厳しくて、誉められることがない、切なかった。でも再読のお蔭で(こっちも歳を重ねて)、愛おしさや懐かしさが込み上げてくる。家の中の所作一つとっても、確かにそんな一時代があったのだ。尊敬して止まない祖父であり、愛してい止まない母の姿が見られた。今なら家族の「暴力」で一括りにされてしまう状況でも、相手を尊敬し想う気持ちが家族をつなげている。そして、今ではすっかりなくなったご近所付き合いも。いい話に出会えた、感謝。2020/02/02
loanmeadime
11
「みそっかす」など幸田文の諸作に続けて読んだので、幸田露伴、文の親子関係と露伴と青木玉さんの祖父ー孫関係、文ー玉さんの親子関係が比較できて興味深かったです。厳格で口うるさいけれども博識に基づく父親の叱咤が有効なことを成人した娘は強く実感している一方、孫にとっては、たまに現れて難しいことを言う祖父の教えは面倒の塊とも言える。評論「愛」に示される「めぐし(恵)」と「むごし(酷)」が表裏一体であることを弁えた家族関係はやはり、この家族に特有のものかもしれません。2025/03/31
千穂
10
母幸田文、祖父幸田露伴の思い出を綴る。大変厳しいお宅で戦前戦中を玉子さんは送ったんだなあと。クスッと笑える思い出話も一杯。母の死の場面は涙が溢れた。図書館で借りて読んだが手元に置きたい一冊。2016/11/30
ホースケ
7
昨今の子育て「褒めて育てる」とは対極とも言える、祖父 幸田露伴と母 文と共に著者が過ごした日々の回想録。絶対的な存在である露伴に逆らうことは許されず、理不尽とも思える物言いや要求にもひたすら耐える文と著者の姿は、時代が違うとはいえ理解の範疇を超えていた。特に長野への疎開の場面はよくぞ耐えたと思うほど辛すぎた。しかし、どこかあっけらかんとした粋な文章がとても心地よく、昭和十年代の季節ごとの準備や生活、情景が鮮やかに蘇ってくると同時に、便利にはなっても季節感も曖昧な現代の生活の味気なさをつくづく感じていた。2019/01/21
-
- 和書
- 野口雨情と仏教聖歌