内容説明
昭和四十三年十月十一日、東京プリンスホテルでガードマン射殺―。次いで京都、函館、名古屋と、日本列島を震撼させた連続射殺魔・永山則夫。獄中で執筆した『無知の涙』、獄中結婚、そして死刑確定。これらを通して、永山則夫の“人間”と事件の全貌を鮮烈に描いた、ノンフィクション・ノベルの話題作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
風に吹かれて
14
1968年(昭和43年)東京、京都、函館、名古屋と連続して射殺事件を起こした永山。事件当時19歳。「公判記録」を基本的な資料としながら可能な限り資料を収集、“事実”は「光を当てる角度によって、全く異なる表情を見せる。」として、「わたしが主観的に書いた小説」(あとがき)とする。1994年著。永山の死刑確定までを描く。➡2019/11/16
GaGa
14
十九歳の犯行、高度経済成長期に安価での労働力として使われた金の卵。幼少期の極貧生活。被告には同情の余地は多大に存在する。しかし、この死刑囚が銃口を向け殺害したのは、ガードマンやタクシー運転手であり、一般の労働者であり、彼を虐げてきた者たちではない。この作品はカポーティの「冷血」をしのぐノンフィクションノベルであり、書き手の佐木氏の主観が全く存在しないことに価値があると思う。2010/06/05
kera1019
6
永山則夫に関しては受容も否定も特に無いけど、この本のノンフィクション・ノベルとしての存在価値は凄いと思う。すんっごい量の各種供述調書や裁判記録からそん時の課程や心理状況が手に取るように見えてくるし、著者は主観的に書いた小説としながらも敢えて肯否を表さない事で邪魔されず事件の深奥に触れる事が出来る… 後書きで「光を当てる角度によって全く異なる事情を見せる」って書いてあるけど、その角度がノンフィクションを読む面白さの一つやと思う。2012/11/06
芋煮うどん
5
遠い昔に挫折し、やっと、再挑戦できた。起訴状や冒頭陳述がそのままで読みにくいが、史上まれに見る事件が、史上まれに見るさばかれ方をしたのがよくわかった。2020/07/26
yakisoba
5
永山則夫の「無知の涙」と併読して読んだ佐木隆三のノンフィクション。永山の幼少時代からの不幸な生い立ちから、殺人犯になっていくまでの課程を恐ろしいほど詳細に調べ上げて一冊の本にまとめてある。一番読んでいて衝撃的だったのは、永山の母親や姉弟に至るまでちゃんと取材していることで、彼が逮捕されることで、親族がどの様に不幸になっていったのか?ということまでが分かってしまうことだった。2011/12/23