内容説明
衝撃のデビュー作「キューポラのある街」をはじめ「私が棄てた女」「青春の門」などの傑作をのこした映画監督・浦山桐郎。23年間で9本しか撮らなかった全作品に、若くして世を去った母と父への追慕の念、ふるさと相生への熱き想いが籠められている。54歳で逝った鬼才の壮絶な生涯を描く、渾身の長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南の風
1
浦山作品は『キューポラのある街』しか見たことがないが、繊細で丁寧な作行と強い情熱には心打たれた。キューポラへのこだわり、朝鮮人の友人たち、主人公ジュンの頻繁な走りの描写など、特異と思えた要素は、浦山自身の体験に根ざしていることが本書によって分かる。■その破滅型の人生は、母親を早くに失ったこと、父親の投身自殺とも関係があろうが、自分でも持て余すような映画への情熱のためでもあったろう。■自分の才気を見せびらかすのではなく、奥深い襞をもち何度でも見たくなるような映画を撮り得た監督の一人だったと思う。2017/09/14