内容説明
争いは世の常、人の常。江戸の世で、その争いの相談所が恵比寿屋のような公事宿だ。ある日、若者が恵比寿屋を訪れ、兄が知らぬ男に金を返せと訴えられたと相談した。喜兵衛は怪しい臭いを感じとる。事件の真相は如何に?江戸の街に生きる市井の人々を、愛情込めて描く長編歴史小説。第110回直木賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
68
面白い。時代物の新しい地平を開いた作品。江戸時代の弁護士的な仕事をする、公事宿の主が主人公というだけでも十分面白いのですが、変に人情じみてなく人間臭い人物造詣も秀逸。時代物の好きは読むべき作品。2018/01/02
遥かなる想い
66
人情物が好きな読者は面白いようだが、私はあまり入り込めなかった。江戸時代の裁判物ではもっと悪のキャラが必要な気がする。2010/05/06
はにこ
52
江戸時代の民事裁判ってこんな感じだったんだね。お白洲はなんとなく知っていたけど、詳しく知ることができたし、こんな公事宿があったということを初めて知った。今だって証拠をそろえるのは難しいのに、当時はもっと難しかっただろう。それによって誤審もあっただろうな。喜兵衛を狙った犯人もわかってすっきりした。2024/02/05
糜竺(びじく)
49
第110回直木賞受賞作品。かなり奥深く読みごたえのある作品でした!真正面から江戸時代の裁判を取り上げており、読んでいてどんどんと引き込まれて行きました。しかも、江戸時代の民事事件の裁判という事で、今までに見た事の無い内容で、非常に丹念に書き込まれており、とても読みがいがありました。また、裁判も二転三転するし、主人公に謎の刺客が放たれるは、冷えきった女房との昔のいきさつも絡んできたりと、色んな事が絡み合っており、読者を全く飽きさせません。理屈では割り切れない、色んな事が見事に表現されていました。お勧めです!2017/01/02
豆乳くま
37
捕物などはポピュラーだが初めて知った江戸時代の民事のお白州。公事宿の主人喜兵衛はさながら弁護士。身に覚えのない全く知らない男から金を返せと訴えられた男の代理の弟が越後から来て喜兵衛の公事宿にやって来た。喜兵衛はそこに怪しい罠を感じお裁きに臨むが。作者初読み。さすが直木賞。淡々とし特に派手な動きはないのに全く飽きさせず読ます。喜兵衛の宿の仕事と家庭のごたごた、親戚にして商売敵、登場人物が無理なく生き生きして素晴らしかった。そして、佐藤雅美さん、まさみさんでずっと女性だと思ってた〜恥ずかしい〜(笑)2017/08/28