内容説明
愛を求めて、人生の意味を求めてインドへと向う人々。自らの生きてきた時間をふり仰ぎ、母なる河ガンジスのほとりにたたずむとき、大いなる水の流れは人間たちを次の世に運ぶように包みこむ。人と人とのふれ合いの声を力強い沈黙で受けとめ河は流れる。純文学書下ろし長篇待望の文庫化、毎日芸術賞受賞作。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
413
登場人物のみんながそれぞれに深い孤独を抱え込んでいる。妻を失った磯辺、愛を信じられない美津子、ビルマでの過去から逃れられない木口、そして「あの人」を求め続ける大津。ラストシーンはあまりにも辛い。こんな終り方をするなんてと思う。美津子は、あるいはマザーテレサのもとに向うのだろうか。大津は?他のインドに召命された者たちは?「河に来る者の一人一人がそれぞれに蠍に刺され、コブラに噛まれた女神チャームンターの過去を持っている」のだろうか?人間存在の、そして愛の根幹を問う遠藤周作の汎神論をも許容するかのような問いだ。2013/06/08
Die-Go
276
遠藤周作祭り第1弾。再読。インド、ガンジス河を舞台に様々な人々の人間観の物語。ここで描かれたキリスト教観はある種の異端の香りを漂わせつつも、語られる物語には人間の悲哀と神の愛の真実が深く描かれている。★★★★☆2016/03/11
sayan
211
神父大津はヒンズー教の行き倒れ巡礼者をガンジス河に運ぶ仕事をする。僕が手渡すこの人をどうぞ受け取り抱いてください、この場面で美津子は彼の宗教の違いを指摘する。そんな違いは重大だろうか、大津は玉ねぎの愛は不変と示す。本場面は、神々の男たち(2010年カンヌ国際映画祭)のクリスティアンを彷彿させる。日々コーランを研究し、イスラム教徒の集まりにも喜んで参加、隣人も玉ねぎの愛は変わらず宗教の形ではないことを受入れる。それを深い河として表象するも結末は前者は達観、後者は諦念を突きつける。人生の態度が問われる作品だ。2018/11/12
Aya Murakami
185
図書館本。講談社文庫平成の100冊対象本。 生まれ変わりとキリストの復活を絡めた日本向けキリスト教の話…かな?人の心の中に生き続けるイエスキリストというテーマは死海のほとりでも取り上げられていたような…?仏教だったりヒンドゥー教だったりイスラム教だったりと姿を変えながら人の心に点在し続けるイエスキリストはいわゆる異教徒の自分にとっても素敵な存在でした。 後、人肉がらみのトラウマに苦しめられる登場人物が隣にいてくれる誰かに救われるシーンもじわっときました。2018/12/11
遥かなる想い
151
遠藤周作の 晩年のころの 作品。 作品自体は、三島由紀夫『豊饒の海』を 想起させる 輪廻転生を 予想させる始まりから、やがて 遠藤周作らしい宗教を 軸にした 物語へと 展開していく。 この物語では、人生の意味を求めて インドへ 渡る 何人もの人が 登場するが、描写の重心は むしろ このインドへ 旅する人たちではなく、 - 「大津」という 神学生 にあるような 気がする。 私は、インドという国に行ったことがないので、よくわからないが、 魅せられる人は 魅せられるようである・・
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