内容説明
朝廷に背き、蝦夷の側に身を投じて戦った父藤原経清、叔父平永衡の名を継いだ清衡は源義家の力を借りて乱を治め、藤原に姓を改めて平泉に黄金の都を築いた。堂塔を建て勅使を迎えて栄華を誇る孫の秀衡の許に源氏との宿縁が三たび影を落とす。壮大なスケールで描く、傑作歴史小説ついに完結。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とん大西
108
陸奥に栄華を極めた藤原氏の楽土、崩れ散る-日本が未成熟な国家だった900年以上も前の北の大地での話。史実のみでとらえれば藤原氏の滅亡と源氏の再興。しかし、経清が起こした魂の炎を最後まで絶やすことなく燃やし続けた末裔・藤原泰衡。蝦夷の誇りを胸に見事なまでの完を成した北の棟梁に滅亡などと不粋な言葉を添えられようか。儚い…が、力強い。哀しいが、この上なく美しい。藤原経清と阿倍貞任の刎頸の交わりから150年、平泉の光彩は陸奥の蒼天に昇華した。2020/01/18
たいぱぱ
85
泣けた。これが男の生きる道。『火怨』から『炎立つ』まで、敗者の美学ではなく、人の生き方の美学があった。一つの花を皆で守るのが蝦夷であるなら、皆のために一つの花が身を捧げるのも蝦夷。藤原泰衡の下した決断は、奥州藤原氏の滅亡と引き換えに、陸奥の人々や村々、文化を未来に遺すことだった。これぞ蝦夷魂、いや朝廷渡来人説を信じると真の大和魂か。「判官贔屓」の言葉の由来、源九郎義経を愛してしまうのは日本人の遺伝子に組み込まれてるとしか思えない。逆に源頼朝は糞過ぎて、行きたかった鎌倉にさえ、行きたくなくなったよ(笑)。 2020/06/11
さつき
71
とうとう読み終わってしまいました!!結末は分かりきっているのに、やはり悲しいです。つかの間の勝利よりも、民の幸せ、蝦夷の未来を選んだ泰衡。この選択は阿弖流爲と同じですね。強く優しい男達の物語。堪能しました。2019/12/10
カレイ.シュウ
70
ついに完結。阿弖流為の時代から長きにわたる、源氏との因縁も藤原氏滅亡で幕を閉じました。史実からすれば争いに破れて滅亡した蝦夷の歴史を、作者の創作によって一大エンターテイメントに作り上げました。楽しめました。2019/04/15
アルピニア
67
全五巻の最終巻。源平の争いから奥州合戦まで。「義経は泰衡に討たれ、奥州藤原氏は頼朝に滅ぼされた」という史実に対する高橋氏の解釈が展開される。阿津賀志山での泰衡と国衡の会話の場面が圧巻。先を見据えている泰衡、源氏こそ蝦夷を唯一対等に見ていると分析する国衡。私には、国衡が貞任の、泰衡が経清の転生のように感じた。戦うのはむしろ容易い。戦いしか念頭にない相手にどう向かい、蝦夷の誇りを先へ繋げるか。その難題を成し遂げることが頭領の真の役目。「この戦さ、百年後には我らの勝ちぞ」基成が頼朝に放った言葉を深く噛みしめる。2021/01/25