内容説明
紘道館の俊英姿三四郎に、苛烈な試練が次々と襲いかかる。柔術諸派との興廃を賭けた対決につづくアメリカ人ボクサーとの変則的な興行。その陰には、怨みを越えて彼を慕う乙美を身売りから救おうとする強い決意が秘められていた。だが、金銭を得る興行は、紘道館からの破門を意味していた…。快男児の激情と懊悩を、柔道の苦難の青春期に重ね合わせて描く渾身のロマン、いよいよ波乱万丈。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆーいちろー
2
三四郎の栄達編と言うべき天の巻を読んで感じるのは、週刊少年ジャンプの「友情、努力、勝利」。紘道館を自ら去った地の巻では「あしたのジョー」のドサ周り編を思い浮かべたりする。最終巻末で笹川吉晴「人と作品」では本書を「格闘技の中にアイデンティティを見出す格闘家たちの物語」と定義し、それが再び現れるのは夢枕獏「餓狼伝」まで待たなければならないとする。この指摘は検討すべき課題だが、少なくともマンガの世界では比較的容易にこの種の物語を見かけることは事実だろう。物語の力は小説の中に生きているのか?そんなことを考える。2013/09/15