講談社選書メチエ<br> コンスタンツェ・モーツァルト―「悪妻」伝説の虚実

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講談社選書メチエ
コンスタンツェ・モーツァルト―「悪妻」伝説の虚実

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  • サイズ 46判/ページ数 320p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062586474
  • NDC分類 289.3
  • Cコード C0323

出版社内容情報

彼女を語るとき、どんなインテリも取り乱してしまうのはなぜなのか? 「世界三大悪妻」の一人とまで言われる、その虚実に迫る一冊!音楽学者にして熱烈なモーツァルト崇拝者でもあったアルフレート・アインシュタイン(1880?1952)はモーツァルトの妻・コンスタンツェを、はっきりと「琥珀のなかの蠅」呼ばわりしました。ご馳走と見ればすぐさまそれにたかりにくる醜く、汚らわしく、うっとうしい存在。そのような存在が、琥珀のようなモーツァルトと密接にかかわったからこそ、彼女は人びとの記憶に残るようになったのだというきわめて否定的な見解が、彼の言にはあらわれています。
 なぜこれほどまでに、コンスタンツェは否定的なまなざしで受けとめられてきたのか?
 この疑問を解くべく、本書ではまず、コンスタンツェの実家であるウェーバー家、および彼女の生涯を概観します。ただし、右の事柄についての資料はけっしてじゅうぶんとは言えず、まだ多くの点が謎に包まれていることは、先にお断りしておきましょう。またそのような状況に置かれている対象を前に、その人物の善し悪しに関して断定的な評価を下すつもりもありません。むしろアインシュタインの評伝を一例としてさまざまなバイアスがかけられた彼女の人生に関し、可能なかぎりその真実の足取りを再構成してみたいのです。
 そして──ここからがこの本の真の目的となるのですが──、彼女が数あるモーツァルト伝やモーツァルト関係のメディアにおいて、どのように描かれ、どのように評価されてきたのかを追ってゆきます。なぜアインシュタインは彼女を「蠅」と呼んだのか、なぜ彼女はヨーロッパからみれば遥か東の島国においてさえ「悪妻」というレッテルを貼られるようになったのか。コンスタンツェに関する受容史を探るのが、じつは本書最大の狙いにほかなりません。
 それにしても、人はコンスタンツェにいったいなにを見てきたのでしょう? またそのような視線のなかに、人はどのような想いをこめてきたのでしょう? 「悪妻」と呼ばれつづけてきたひとりの女性をめぐって、人間の抱える複雑な羨望と嫉妬、それぞれの置かれた時代相が解き明かされてゆくはずです。(序章を抜粋要約)

序 章 琥珀のなかの「蠅」
第一章 モーツァルト家vs.ウェーバー家
第二章 コンスタンツェという女性
第三章 「理想のモーツァルト伝」のために
第四章 加速する「悪妻」イメージ
第五章 伝説は覆されたか?
第六章 日出ずる国のコンスタンツェ
終 章 彼女を語るとき、ひとは……


小宮 正安[コミヤ マサヤス]
著・文・その他

内容説明

彼女を語るとき、ひとはなぜか取り乱してしまう。まるでついに己のみすぼらしい夢を暴露されてしまったかのように。芸術を愛し理解するとは、いったいどういうことなのか?天才の妻とは、いかなる存在であればよかったのか?二百年にわたる「極端な評価」の数々を読み解き、虚心に真の姿を検証する試み。

目次

序章 琥珀のなかの「蝿」
第1章 モーツァルト家vs.ウェーバー家
第2章 コンスタンツェという女性
第3章 「理想のモーツァルト伝」のために
第4章 加速する「悪妻」イメージ
第5章 伝説は覆されたか?
第6章 日出ずる国のコンスタンツェ
終章 彼女を語るとき、ひとは…

著者等紹介

小宮正安[コミヤマサヤス]
1969年東京生まれ。東京大学大学院人文社会科学研究科博士課程満期単位取得。秋田大学を経て、横浜国立大学(大学院都市イノベーション学府・研究院都市地域社会専攻、2017年4月より都市科学部都市社会共生学科兼担)教授。専門はヨーロッパ文化史およびドイツ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

鐵太郎

13
映画「アマデウス」で、そういえば彼の妻はコンスタンツェだったっけ、と思いだしたもの。それほど個人的には印象が薄かったのですが、かつてモーツァルトという不世出の天才の妻であったこの人は、「悪妻」「愚妻」の悪名を付けられていたのだそうな。なぜこんな汚名が彼女に課せられたのかという事について、作者は彼女とモーツァルトの人生とそのあとの歴史をじっくりと追っています。彼女についてわかっていることはあまりに少ないにもかかわらず、なぜこんなにさまざまな評価が出たのか。そんなこんなを、作者は優しい視点で描いています。2020/10/06

horuso

3
カバーの惹句に偽りあり。『真の姿を検証する試み』とあるので、新資料が出たか、著者が独自の考察を行ったのかと期待したが、基本的にこれまでの論説をまとめただけで、真の姿の検証など(でき)ないし、著者の考えも示されない。モーツァルトの音楽好きが嵩じて文献を読み漁ってきたので、出てくる学術的資料のほとんどは既読で、初めて知ったことはなかった。だが、こう並べてもらうと、それぞれの主張が時代の制約の中でなされたことがよくわかるのと、フィクションでコンスタンツェがどう描かれてきたかは知らなかったので、無駄ではなかった。2017/04/30

ゆずこまめ

2
モーツァルトが偉大な作曲家で不世出の芸術家なことは確かだけど、父として夫としてどうだったかはコンスタンツェにしかわからない。 コンスタンツェの悪妻との評判は欠席裁判のようで、あまり気持ちがよくはない。 そもそもモーツァルト本人が賢妻を望んでいたのか?2019/12/17

みけねこ

2
コンスタンツェのみならず、いろんな角度から人を見るって大事だなと思った。人の数だけ色んな解釈あるから複雑だし面白いのかもしれない。言われている方はたまったものじゃないけれど。2019/11/29

trazom

2
この本では、どのようにしてコンスタンツェ悪妻論が形成されてきたかという歴史的変遷が紹介されている。単にコンスタンツェ論にとどまらず、モーツァルトの受容史が変遷した様子が明らかにされ、視野の広いモーツァルト論が展開する。コンスタンツェを切り口にして、古今のモーツァルト評論を概観して比較するという面白い切り口である。こうしてみると、コンスタンツェをどう捉えるかということが、モーツァルトとどう向き合うかのリトマス試験紙になるような気がする。尤も、読み終わっても、やっぱりコンスタンツェは好きになれないけれど…。2017/06/14

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