出版社内容情報
篠田 英朗[シノダ ヒデアキ]
著・文・その他
内容説明
複数の人間集団が「相容れない目的」をもつとき、紛争が生まれる。イデオロギー、地理的条件、経済的利害、信仰…。お互いの拠って立つ基盤と価値観の矛盾を推し量らなければ、その果てには流血と悲惨あるのみである。もはや主権国家だけがアクターではない国際社会の冷厳な現実を見据える、醒めた分析力をやしなうための一冊。
目次
第1章 現代の国際秩序―主権国家と自由主義
第2章 勢力均衡―東アジアの紛争と中国
第3章 地政学―ヨーロッパの紛争とグレート・ゲームのゆくえ
第4章 文明の衝突―中東の紛争と対テロ戦争の帰趨
第5章 世界システム―アフリカの紛争と格差社会としての現代世界
第6章 成長の限界―アメリカの「明白な運命」と進歩主義の未来
著者等紹介
篠田英朗[シノダヒデアキ]
1968年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。同大学大学院政治学研究科修士課程修了。ロンドン大学(LSE)で国際関係学Ph.D.取得。広島大学平和科学研究センター准教授などを経て、東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。専攻は国際関係論、平和構築。著書に『平和構築と法の支配―国際平和活動の理論的・機能的分析』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おさむ
36
大学の国際関係論の講義の教科書みたい笑。とはいえ、国際紛争を理論から分析する手法は意外と新鮮。フクヤマの「歴史の終わり」、モーゲンソーの勢力均衡、マッキンダーの地政学、ハンチントンの文明の衝突、ウォーラーステインの世界システム論。最後はローマクラブの「成長の限界」。どの理論が1番ということはなく、それぞれ長所と短所がある。イデオロギー、宗教、地理的条件などなど、世界を読み解くには、複合的な視座が大切だと改めて認識しました。そうそう、モンロー主義を孤立主義とするのは誤解というのは初耳でした。2017/09/30
吟遊
11
紛争にかぎらず、国際情勢、ないし国際政治のダイナミズムや回顧される歴史(法則性がないように見えることが多い)を、理論的な視座から見直す。こういう本はなかなかないように思う。国際ニュースを背景含めて読み解いて整理するのは、とても難しいから、役立つ。硬派な学術で情緒を廃した(ヒューマニスティックですらない)本だけど、そこがいいのかも!2017/06/09
中島直人
8
(図書館)「勢力均衡」、「地政学」、「文明の衝突」、「世界システム論」、「成長の限界」の五つの視点から世界の紛争を読みとく。一つ上の視点から、世界情勢を見極める、解釈する視点が得られる。知的な刺激が得られる面白い本。2018/09/16
とある本棚
5
勢力均衡、地政学、文明の衝突、世界システム論など所謂一昔前の理論を扱っているが、各理論の限界と今なお有用な部分を的確に指摘している。ポリサイではグランドセオリーが敬遠される傾向にあるが、各国の指導者や外交当局者は今なおグランドセオリーを念頭に意思決定をしているかのように思われる節があり、国際情勢を解像度高く把握するためには、本書のような定性的な理論も必要であろう。特に地政学の章は、現在進行形のウクライナ戦争を理解する上でも有用であると思われる。2022/04/03
バルジ
3
最近では激しい「憲法学」批判を繰り広げている篠田先生だが、本書は国際政治を分析する際の「構造」を5つの章に分けて論じている。個人的には4章・5章・6章が興味深い。まず4章・5章であるが、これらの章は著者の専門である平和構築分野に関する「紛争原因」や地域社会の問題点を探る視座が活用されていて面白く、適宜本章で用いている視座を批判しつつ部分的に評価している点が良い。また6章は「自由主義」を軸としてアメリカの対外姿勢と歴史的経緯を論じる 。全体的に国際政治と政治思想がバランスよく組み込まれているので楽しく読める2019/10/20