講談社選書メチエ<br> ロシアあるいは対立の亡霊―「第二世界」のポストモダン

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講談社選書メチエ
ロシアあるいは対立の亡霊―「第二世界」のポストモダン

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  • サイズ B6判/ページ数 264p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784062586160
  • NDC分類 309.023
  • Cコード C0310

出版社内容情報

ロシアとはいかなる精神構造を持っているのか。つねに「なにか」の対立者として自己を規定する存在の一見不可思議な行動の根源を探る20世紀は民衆と権力、資本主義と社会主義の対立の時代でした。そして1968と1991という年号は、そのふたつの対立の終焉を告げる契機となったとされています。1991年以降混乱をきわめたロシアは一時、歴史の表舞台から消えましたが、21世紀に入りその存在感を奇妙なかたちで取り戻しました。そして、2014年ウクライナ危機では核兵器まで用意し、かつての冷戦構造を彷彿とさせたのです。
本書は、一九六八年以後のロシア現代思想の歩みを渉猟し、「対立が終わった時代」の対立をめぐる想像力を追跡します。社会のカナリアである思想家・芸術家の表現を丹念に読み解いていくことで、ロシアという国家の根底にあるアイデンティティ構造をあぶり出します。つまり、自らをつねに「xの他者」(X=資本主義、権力……)と規定する不安定な精神がロシア的構造です。
大きな物語の崩壊した時代=ポストモダンの日本ではおもに、「絆」によって「小さな物語」同士を調停する「大きな仕組み」を求めています。一方で、ロシアでは、「第二世界」の物語を書きかえることで、「xの他者」という物語を活性化しようとしています。
現代を読み解くための必読書です。

はじめに 一九六八/九一年の亡霊
主要人物一覧
第一章 「第二世界」の物語
   一 日本とロシアのポストモダン
   二 「第二世界」のシニシズム
第二章 ソ連記号論のパフォーマティヴィティ
   一 「私」とその外部
   二 ロトマンの演劇的文化論
   三 自由の権力性
第三章 ポストモダニズムの「ロシア」
   一 記号論の「ロシア」
   二 ポストモダニズムと観測問題
   三 カオスの二つの顔
   四 ナショナル・アイデンティティとしての爆発
第四章 記号から身体へ
   一 「生の構築」批判
   二 言葉とその外部
   三 「あいだ」としての身体
第五章 「第二世界」のない対抗
   一 「権力にとっての他者」の困難
   二 共産主義の未来と過去
   三 対抗としての共同性
   四 対抗としての無為
おわりに 対立を消尽するために
年表
あとがき
索引


乗松 亨平[ノリマツ キョウヘイ]
著・文・その他

内容説明

1968と1991。「権力/民衆」「資本主義/社会主義」という、二大対立の終焉を告げる年である。二〇世紀末、歴史の表舞台から姿を消したロシアは、二一世紀、奇妙な存在感とともに浮上する。ロシア現代思想に表出した、いくつもの「対立の亡霊」をめぐる想像力を追跡し、ロシアのポストモダンと西側のポストモダンの相違を大胆に読み解く。

目次

はじめに 一九六八/一九九一年の亡霊
第1章 「第二世界」の物語
第2章 ソ連記号論のパフォーマティヴィティ
第3章 ポストモダニズムの「ロシア」
第4章 記号から身体へ
第5章 「第二世界」のない対抗
おわりに 対立を消尽するために

著者等紹介

乗松亨平[ノリマツキョウヘイ]
1975年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学、博士(文学)。現在、東京大学大学院総合文化研究科准教授。専門は近代ロシア文学・思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

無重力蜜柑

12
雪解け以降のソ連〜ウクライナ危機までのロシア現代思想の展開を追いかける本。「私はXにとっての他者である」。Xに「西側」あるいは「権力」を代入して成立していたロシア現代思想が、前者はソ連崩壊により、後者はブレジネフ以降の停滞期の「脱政治」により失効しつつ、何度も変奏されてきたというのが基本的な視座。ガチガチに文芸批評・現代思想すぎて自分には理解し難いところも多々あったが、ソ連やロシアのインテリがどういう風に自分たちの社会を見ているのかが伝わって来て良かった。思想の細部はもう少し省いてくれてもよかったが。2022/05/08

ころこ

6
著者の実力は、西欧現代思想のまとめであるP16~17を読めば一目瞭然です。ところが、普段は内容よりも、思想家哲学者の固有名に頼っていたのだと再認識させるくらい、著者の文章を以ってしても、ロシア現代思想の論点がよく分かりませんでした。また、著作の主張だけではなく、文体、寄り道の様な教養、文章以外のパフォーマティヴ振る舞い、何より他の研究者による言及など、我々が無意識に行なっている評価の在り様を改めて考えさせられました。とりあえずは安易な方法としても、バフチンやコジェーヴ、グロイス周辺の言説から雰囲気を掴んで2017/08/24

sk

5
ロシアのポストモダニズムについて論じた本。何か大きなものに対立する第二世界のアイデンティティの変遷。2017/09/23

Go Extreme

1
歴史的背景: 冷戦崩壊 ソ連記号論 ペレストロイカ 雪どけ 言語規範 他者性 ポストモダン: ロシア文化 知識人 反権力 ユーラシア主義 国家と個人: 主体性 自己疎外 記号のパフォーマティヴィティ 権力批判 市民社会 記号圏 知識人と思想家: ロトマン ルイクリン エプシュテイン ユルチャク ナンシー ソルジェニーツィン 政治と社会: プーチン政権 1990年代の混乱 西側との対立 ノスタルジー 共同性 規範の超出 未来展望: 文化的対話 教育改革 意識変容 新たな市民社会 価値観の再構築2025/03/02

hobby no book

1
一時期「ロシア的」なものに惹かれていたのだけれど、最近は関心が薄れていたので、何となくここ数年のロシア思想について知れるのではと思い。完全に論文のテイストで書かれていたため、どうも読みはじめのテンションが維持できずに、それこそ途中で関心が薄れてしまった。人名と引用のオンパレードの中、同じような話題が円環しているような印象で読み終わってしまった。2016/03/27

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